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日刊建設工業新聞
2016/04/12

【鳥取】新県土整備部長に就任 山口真司氏(53)にインタビュー

 4月に県土整備部長に就任した山口真司氏が11日までに本紙のインタビューに応じた。3年前に国交省から同部次長に着任。昨年7月からは同部理事監となり、「国土強靭化地域計画」をまとめた。県土4年目にあたり、地方創生への道のりや最低制限価格、上半期の執行見通しを聞いたほか、日ごろ職員に「技術政策集団であれ」と言う真意を語ってもらった。

−まず、やるべきことは
「新年度は地方創生のロケットスタート2年目の年。県土整備部ができることは何なのかよく考えていきたい。あくまでもインフラというものは造ることが目的ではなく、できたものを使ってもらうためのもの。地方創生はその上に乗っかる将来像であり、我々は決して地方創生をしぼませてはならない。そのためにどんなインフラをいつまでに造るかを考え、そして地域の声を聞いて『本当にほしかった』と言われるものを造る。こういった取り組みに一番力を入れていきたい」
−4月から建設工事の最低制限価格が92%に上がりました
「昨年度から経営分析して今の状況を調べ、いろいろ議論してまとめた。まず新年度はどういった結果になるのか、しっかりと見極めたい。また業界から良くなった点や、至らない点など率直に意見交換させてもらい考えていきたい」
「ただ、今の形が良いのか正直、まだ分からない。というのは、今後の建設業を考えるときに一番の課題は担い手の育成。経営環境を改善するために最低制限価格という手段はもちろんある。他方で若手の入職者があってインフラの整備に携わっていただき、ずっと雇用し続けられるといった観点から、本当の経営環境はどういったものが良いのか。次なるステップを考えなくてはならない」
「大卒者を雇っていただく奨学金の返還助成制度に県建設業協会、県測量設計業協会からも協力をいただいた。担い手育成を実現するためには経営の安定化がないと上手くいかない。将来にわたって建設業が地域にあり続けるためには何が必要か。業界と意見交換してやるべきことをやっていければと思う」
−現場管理費、一般管理費がまだ不十分という声もあるが
「じゃ、十分な一般管理費とはいったい何なのか。ただ利益のために一般管理費を上げるというのは、なかなか説明するのが難しい。あくまで使うのは税金であって、納税者に説明できることが必要かと思う。同時に地域にあり続けるためには、他の企業の水準も見ながら考えないといけない。民間の方々がいろいろ切磋琢磨して競争している部分があるかもしれない。そこは業界も同じように切磋琢磨していただき、それがあって地域の方々とはじめて同等になってくる。本来なら、切磋琢磨の部分が工事品質であったり、なかなか進んでいないところがあるが技術提案であったりと餅は餅屋。例えば良い計画があって品質が上がり、迷惑をかけず速く施工ができ、引いては利用していただく納税者の方々にも利益につながる。それだったら理解されるのかなと思う」
−景気刺激策で上半期の執行を82%に設定した。達成する道筋は
「これまでにも経済対策に取り組んできたが、正直80%を超える数字は過去になかった目標。今まで通りにやれば、達成できるのか分からない。発注計画はもちろん考えるのと同時に、なぜ前倒しをやらなければならないのか考えないといけない。要は契約して前金、キャッシュが払える状態をつくることが一つの目標であれば、例えば直轄でやっている余裕工期の設定も一つ。河川の非出水期工事でも9月に契約してもいい。11月の着工までは専任技術者の配置を求めないとか、早く契約して人の手配など段取りをしてもらって、お金も使っていただく。これも経済対策の方策になり得る」
−下半期の息切れも心配です
「メディア報道にも出ているように、次の経済対策という声もある。逆に言えば、もし経済対策があれば、有効活用するためにも早く工事を出して業界の皆さんにも目途を立ててもらい、次の補正に対しても準備していただける。こう考えてもらえればありがたい」
−最後に地方創生に向けた意気込みを
「鳥取県は人口最少県。だからこそアイデアがあればモデルにもなれる。行ってみたい、住んでみたいと、外の方々から注目されるきっかけを作りたい。そのためには基盤がないとできない。高速道路は便利で来やすくなる利便性がある一方で、地元が夢を語って実現化していくといった、二つの大事な役割を果たしていかないといけない。職員には、ただ単に『造ってくれ』と言う要望を聞くのではなく、地元が何を実現するためにインフラを必要としているのか、そこを掴むように言っている。そうしたらより一層、良いものができるし、地元に行っても話がスムーズに進む。着実に成果を上げていきたい」

※プロフィール
1963年(昭和38)年1月29日生まれ。香川県高松市出身。京大農学部卒。86年4月、建設省職員。2005年4月、国交省北陸地整局湯沢砂防事務所長。09年4月、東北地整新庄河川事務所長。11年7月、水管理・国土保全局砂防部砂防計画課地震・火山砂防室長。13年4月、県土整備部次長。15年7月、同部理事監(国土強靭化担当)。