県総合企画部交通計画課は、本年度で実施した「千葉県における鉄道アクセス向上に関する調査」の調査結果を公表した。同調査では、京葉線の複々線化について3つの運行ケースを設定し、費用効果などの分析・検討を行った。その結果、概算事業費は約1100億円で、いずれも費用便益比は1・0以上となり一定の整備効果が期待できるものの、収支採算性では累積資金収支の黒字転換に長時間を要するなど課題が明らかになった。
複々線化は、京葉線と武蔵野線の合流地点(市川市高谷付近)から新木場駅間を対象とし、1時間に3本(ケースA)、同5本(ケースB)、同9本(ケースC)の3つの運行ケースを設定。ケースAは京葉線の混雑率について150%以内を前提とし、ケースBはケースAに京葉線(東京行き)2本を減便して振り替え、ケースCは京葉線〜羽田空港直通も設定しつつ、さらに増便することを想定した。
その結果、費用便益比は3ケースとも1・0以上で、一定の整備効果が期待できる結果となった。収支採算性では、ケースAとケースCで単年度収支が赤字となり、ケースBでは単年度収支は黒字となるが、累積資金収支は30年で黒字に転換せず、黒字転換に相当の長期間を要するなどの課題が認められた。
概算事業費については、京葉線には長大橋梁があることや工期の変更など、詳細設計を行った場合に事業費が増加する可能性がある一方、鉄道利用者数については、鉄道ネットワークの充実や沿線開発のさらなる進展などにより増加する可能性も認められた。
同調査は、京葉線沿線地域や県内全域へ及ぼす効果などを検討するとともに、京葉線とりんかい線の相互直通運転の実現に関する要望が高まっていることを踏まえ、東京都心への鉄道アクセス向上について調査を実施。その中で、東京都心へのアクセス向上として京葉線の複々線化を検討した。
同調査ではこのほかに「成田空港への鉄道アクセス向上」について、成田空港第3滑走路の整備等に向けた協議が開始されるなど、航空需要が大きく変動することが見込まれることを踏まえ、成田空港付近の単線区間の複線化等についても効果や課題を整理した。
調査結果については、相互直通運転及び京葉線複々線化の実現により、京葉線・りんかい線利用者の利便性向上だけでなく、首都圏の鉄道ネットワークの充実、幕張新都心を含めた東京湾岸地域の活性化、さらには南房総・九十九里地域の振興などの面から大きな効果が期待できるとし、運賃収受の問題も含め、収支採算性の確保などの課題についてさらに検討を進めていく。
調査結果は今後、国や鉄道事業者に対する要望等に活用していく予定。
なお、同調査のとりまとめは一般財団法人運輸政策研究機構が行った。