北陸地方整備局は29日、検証対象となっている利賀ダム建設事業について、第3回関係地方公共団体からなる検討の場を、砺波市の庄川生涯学習センターで開き、ダム建設の代替案として複数の案を示した。石井知事は「ダムは150年に1度の水害に備えるもの。流域の市長もすべて抜本的な対策であるダムの建設を望んでいる」と述べ、改めて早期建設を求めた。
5年ぶりの開催となった検討の場には、石井知事と庄川流域の南砺、砺波、小矢部、高岡、射水の5市長が出席。冒頭、藤山秀章整備局長が「治水、利水、流水の観点から、事業がどうあるべきか、ゼロベースで見直している。再評価の実施要領に沿って事務作業については、できるだけ早く進めたい」とあいさつ。事務局から治水対策、新規利水対策、流水の機能維持対策について複数の案が説明された。その中から、庄川に適用可能な方策として治水4案、新規利水10案、流水11案を抽出した。今後、総合評価などの手続きが行われる。
治水では、▽河道の掘削▽放水路(和田川下流ルート)と河道の掘削▽ダムの有効活用(利賀川ダムの操作ルール見直し)と河道の掘削▽雨水貯留施設、雨水浸透施設、水田等の保全・機能の向上、河道の掘削|の4つの案を抽出した。
新規利水では、▽地下水取水▽豆谷ダム再開発(かさ上げ)▽同(掘削)▽他用途ダム容量の買い上げ(大白川ダム)▽同(小牧ダム)▽同(利賀川ダム)▽同(豆谷ダム)▽同(和田川ダム)▽同(境川ダム)▽既得水利の合理化・転用|の10案が挙がった。
流水では、▽神通川ルート水系間導水▽境川ダム再開発(かさ上げ)▽他用途ダムの買い上げ(御母衣ダム)▽同(大白川ダム)▽同(小牧ダム)▽既得水利の合理化・転用▽境川ダムのダム使用件等の振り替え、神通川ルート水系間導水▽同、地下水取水▽同、海水淡水化▽同、豆谷ダム再開発(かさ上げ)▽同、境川ダム再開発(掘削)|の11案が抽出された。
意見交換では、石井知事が「30年から40年を見据えた河川整備計画に則って検証が行われているが、利賀ダムは150年に1度の水害に対応できる。流域住民の安全度が下がることがないよう、コストのみでなく、幅広い効果も評価すべき」と指摘した上で、「速やかに検証作業を終え、次の展開をお願いする」と要望した。
ダムが所在する田中南砺市長は「ダムは下流の住民を守ることは当然だが、上流においても景観として観光面で大きな成果をもたらす。地域社会の『心の安全』にも期待が大きい」と意見を述べた。ほかの出席者からも「抜本的で恒久的な対策を講じてもらいたい」などダム建設に期待する声が相次いだ。
石井知事は会合後、取材に対し、「5年待ったが、公正な検証には時間が掛かる。今回は結論に向けて大きく動き出すステップだった。次は、そう遠くない将来に開いてもらえる」と期待を示した。
なお、北陸地方整備局は30日、検証に係る検討に関して意見募集を始めた。4月28日まで。今後の検討に反映させる。
検討の場は10年11月に始まり、11年3月の第2回を最後に開かれていなかった。