北陸経済研究所が主催の「2016北経研新春講演会」がこのほど、富山国際会議場で開かれ、フューチャーアーキテクト代表取締役会長CEOで、経済同友会副代表幹事の金丸恭文氏が「アベノミクス 成長戦略と規制改革」と題し講演した。協賛は富山経済同友会、地方シンクタンク協議会・北陸ブロック。
この日は約80人が参加。冒頭、川田文人理事長が「成長戦略はアベノミクスの一丁目一番地。その中身は岩盤規制をいかに改革するかということ。安倍総理はドリルになり穴を開ける決意を表明されたが、そのドリルの刃先が金丸さん。昨年の農協改革では、金丸さんがワーキンググループ座長として中心的な役割を果たした。現在も政府の各種委員を務め、いろんな改革に尽力されており、今日の講演は大変興味深い」とあいさつ。
講師の金丸氏はまず、自己紹介を兼ねプロフィールを紹介し、「工学部卒業後に就職したTKCで、会計を勉強したことがその後の人生に大きく影響した」と述べ、「転職後の28歳に、リーダーとして会計事務所用の16ビットパソコンを開発。セブンイレブンの仮説検証型のビジネスモデル構築の一端をお手伝いした」と説明した。
さらに、「85年の日本電信電話(現NTT)民営化に伴い、同社と合弁会社を作り、パソコン通信事業を手掛けた」とし、「35歳で現在の会社を起業したが、バブル崩壊がなければ、会社は大きくならなかった。経済が落ち込む時代でないと、新しい人が活躍できる場はない」と語った。
経済同友会の活動も振り返り、「05年に外交安全保障委員長として、NSC提言を行ったことが政治に近づいたきっかけ」と述べ、「11年には発送電分離を提案。現在実現しつつあるが、当時はとても緊張感があった」と話した。
政府関係の活動としては、「IT系を中心に活動しているが、海外ではWi|Fi環境が充実している。観光客は、撮影した写真をその場でSNSにアップする。Wi|Fiは観光面からも非常に重要。日本は富士山なども含めてもっと整えるべきだ」と訴えた。
一方、日本の現在と将来に関しても持論を展開し、「国力には軍事力や政治・外交力、経済力、文化力だけでなく、IT力がすでに入っている。しかし、ITの活用法は日本がメンテ中心で、世界は投資とまるで逆」と指摘。国を動かすツールとして、「各種会議体と内閣人事局が改革には不可欠」と強調した。
また、「経営の三要素のヒト、モノ、カネはもう古い。現代の経営はスピードと情報の時代」と力説し、「デフレの要因はスマホ。若者は商品の価格推移表をチェックしている。企業と個人では個人が勝つ時代。そのことを企業は認識すべき」との考えを示した。
IT教育に関しては、「北欧などでは、ITが義務教育となっている国も多い。富山がプログラミング教育の先進地になるべき」と助言し、「ソフトウェアでハードウェアを動かす価値が拡大しつつあり、あらゆるモノがインターネットでつながるIoTが重要になってくる」と話した。
最後に「起業を促進し、農業を産業の柱にすることが地方創生につながる」と説き、「大学の工学部と中小メーカーのコラボで農業用機械を開発してほしい。日本はこれまで大企業が有利だったが、スモールな企業が有利な状況は今後も続く。イノベーションは中小から始まる」と結んだ。