建通新聞社(神奈川)
2016/03/04
【神奈川】横浜市建築局 「横浜市空家等対策計画」を策定 政令市初
横浜市建築局は、神奈川県内で初めて、全国の政令市でも初めてとなる「横浜市空家等対策計画」を策定した。計画期間は2015〜18年度の4年間。空き家の予防と流通・活用促進、管理不全な空き家の防止・解消、空き家に係る跡地の活用―の四つの取り組みを柱に、空家等対策を総合的・計画的に実施する。所有者の分からない「特定空家等」認定の判断基準については、国土交通省のガイドラインにもある「空家等の状態」に加え、周辺建築物や通行人などに著しい悪影響や危険などをもたらす恐れがある「周辺への影響等」を加味して定義した。
空家等対策計画では、まず空き家の適正な管理を促し空き家の予防を目指す。近隣から苦情が寄せられる管理不全な空き家については、空家法を活用して所有者を特定し改善を指導する。
次に、空き家化した住宅のうち利用可能なものを地域の資源と捉えて流通・活用を促進し、まちの魅力向上につなげる。16年度当初予算案に区局連携事業として「空家対策モデル検証事業」に750万円(市民局600万円、建築局150万円)を計上。磯子区など地域ニーズのある場所で地域活動拠点づくりに向けた組織づくりや事業計画づくりを支援する。
このような空家対策の総合的な取り組みを進めるためには、空き家所有者や行政だけでなく地域住民や大学、不動産・法務・建築・まちづくりNPOなどの専門家団体や民間事業者など多様な主体との連携が必要。市では15年度に設置した「横浜市空家等対策協議会」で、随時必要な協議を行い対策を推進する。
横浜市の施策の概要と特定空家等の判断基準は次の通り。
■■具体的な施策
【1・空家化の予防】
▽市民への情報発信(啓発パンフレットの配布など様々なツールを活用した広報)
▽納税通知書を活用した全住宅所有者への空き家適正管理のお願い
▽専門家団体の相談窓口への案内や「住まいの相談窓口」との連携
▽専門家団体と連携した空家相談会の実施
▽木造住宅耐震等改修補助の実施
▽地域への啓発活動(出前相談会)の検討
▽高齢者ひとり一人への支援に向けた専門家等との連携の検討
【2・空家の流通・活用促進】
◆中古住宅としての市場流通
▽専門家団体の相談窓口への案内や「住まいの相談窓口」との連携
▽エコリノベーション補助(改修費補助)の実施
▽エコリノベーションアカデミー(講習会)の開講
▽リノベーション事例集の作成
▽子育て世帯や若者の居住促進を目的とした中古住宅の活用(子育てりぶいん事業や大学・地域と連携したシェアハウスモデル事業など)
▽中古戸建て住宅の流通促進の国等の取り組みとの連携の検討(インスペクション制度、住宅履歴情報など)
◆地域の活動拠点等住宅以外の用途への活用
▽まちづくりNPO等と連携した地域活動拠点、社会福祉施設、子育て支援施設への活用マッチング
▽地域の活動拠点等の活用マニュアルの作成と課題解決に無絵k多検討(法制度、資金面など)
▽空家所有者と利用希望者で情報を共有する仕組み(空家バンク)の検討
【3・管理不全な空家の防止・解消】
◆所有者啓発・地域での取り組み支援
▽専門家団体の相談窓口への案内や「住まいの相談窓口」との連携
▽季節に応じた適正管理の注意喚起
▽地域(町内会、社会福祉協議会等)での見守り事例の紹介
▽地域の人材(高齢者)を生かした維持管理の仕組みの構築
▽空家協力事業者の紹介の仕組みの検討
◆行政による改善指導
▽空家法を活用した区局連携体制による改善指導の実施
▽横浜市独自の特定空家等の判断基準の策定
▽緊急対応措置の検討
【4・空家に係る跡地の活用】
◆密集市街地対策との連携
▽不燃化推進地域における除却補助
▽防災広場としての跡地の活用
▽建築士による調査・助言(木造建築物安全相談事業)の実施
▽跡地を活用した個別建て替えや共同建て替えの誘導策の検討
◆その他
▽コミュニティスペース、菜園等跡地活用の検討
■■特定空家の判断基準
(1)空き家の状態
▽建築物全体
・20分の1超の傾斜
▽建築物の構造耐力上主要な部分
・基礎が著しく破損または変形
・土台が著しく破損または腐朽
・柱、はり等が著しく変形又は破損等
・屋根又は外壁の構造材及び下地材構造材、下地材が著しく破損等
▽屋根ふき材等の大部分の剥離、破損等
▽外壁の外装材等の大部分の剥離、破損等
▽屋外階段又はバルコニー著しく腐食し、脱落等のおそれがある
▽その他の建築物に付属する工作物等(雨どい、窓ガラス、室外機等)が著しく腐食等し、脱落、倒壊等のおそれがある
▽門、塀、擁壁等の建築物の敷地内に存する工作物が著しく腐食、破損又は傾斜等し、倒壊、崩壊等のおそれがある
(2) 周辺への影響等
▽空家等が放置されることにより、周辺の建築物や通行人等に著しい悪影響、危険等をもたらすおそれがあるもの。建築物の密集状況、公園や道路の有無、道路の利用状況、その他建築物の立地特性などを参考にする。
提供:建通新聞社