福島建設工業新聞社
2016/02/23
【福島】相馬福島道路・桑折高架橋/下部工で品質確保対策試行
東北地方整備局福島河川国道事務所は、国道115号相馬福島道路・霊山〜福島間の仮称・桑折高架橋の下部工で、同局がまとめた「コンクリート構造物の品質確保の手引き案(橋脚、橋台、函渠、擁壁編)」に基づく品質確保対策を試行する。発注者と受注者が一体となって、より耐久性に優れたコンクリート構造物の建設を目指す取り組みで、打ち込み時の施工状況把握チェックシートと表層出来栄えの目視評価により、施工中に生じる不具合を抑えるとともに、共通仕様書で定められた養生期間以外に追加養生を行ってコンクリート表層の緻密性を高める。先行発注した2工区で取り組みに着手する。
東北地方のコンクリート構造物は、積雪寒冷な気候条件と凍結防止剤散布等の影響で、他地域と比べ塩害や凍害、ASR、これらの複合劣化が発生しやすく、同局の管理する道路橋約3000橋の橋脚・橋台のうち約10%が5年以内、約70%が10年以内に補修が必要な状況。短期間で大量の構造物が建設される復興道路・復興支援道路では将来、更新時期が集中する可能性もある。
そのため同局では、現場打ちの橋脚、橋台、函渠、擁壁を対象とした品質確保対策として、山口県の取り組みなど先進事例や専門家の協力を得ながら、施工状況把握チェックシートと表層目視評価を組み合わせた試行工事を三陸国道などで実施しており、試行の円滑化を目的に、施工段階の必要事項を手引き案としてまとめた。1月に各出先事務所に通知している。
福島河川国道事務所では、今後工事が本格化する相馬福島道路・霊山〜福島間の構造物初弾工となる長大橋・桑折高架橋で、手引きに基づく対策を県内では初めて導入する。復興支援道路として求められるスピードを維持しながらも、初期の欠陥を極力排除することで、高耐久性のコンクリート構造物の建設を目指す考えで、今年度に発注した東向田地区、界地区の両下部工工事で先行的に取り組む。霊山〜福島間の全橋梁での活用も視野に入れる。
対策は、かぶりコンクリートの表層品質を確保し、塩害等の劣化因子の侵入を軽減するのが狙い。施工状況把握チェックシートと表層目視評価により、施工中に生じる沈みひび割れ、打重ね線などの不具合を抑制。標準養生後に追加養生を行うことで緻密性を向上する。
チェックシートは、コンクリート標準示方書の重要項目を選定し構成。打込み作業時に活用し、施工の基本事項の順守を促し、コンクリート本来の均質・密実性、一体性を確保する。目視評価は型枠を外した後、表層の表面気泡、砂すじなど5項目について4段階のグレーディング評価を実施する。これまで数値評価されなかった竣工検査合格範囲内の表層出来栄えを評価することで、施工方法の妥当性の検証や施工方法改善のためのPDCAに結び付ける。
監督員と施工者の双方が両作業をセットで、打設リフト(ロット)ごとに行い、改善事項を明確にし、次の打設リフトの施工に生かしていく。
追加養生は、コンクリート本来の耐久性を発揮するのに必要な緻密性を得るために行う。桑折高架橋の先行現場では、標準養生後の足場存置期間を活用して橋脚・橋台を農業用ビニールシート等でラッピングする方法などを想定している。
同事務所では、共通仕様書で求められる強度だけでなく、表層出来栄えの向上についても発注者と受注者が認識を共有し、一体となって取り組むことで、耐久性に優れた「100年コンクリート」の実現を目指したい考え。昨年12月に事務所技術職員を対象とした勉強会を開催しており、受注者との研修も行う予定。専門家を交えた産学官の連携も想定している。
桑折高架橋は、JR東北新幹線・東北本線などを跨ぐ橋長1218bの19径間鋼連続箱桁橋。鋼構造のP17橋脚を除き、全ての橋台・橋脚(国道4号ICランプ3基含む)で品質確保対策を行う。東向田地区(施工=戸田建設)は鉄道近接部前後の橋脚4基(P10〜12、P15)、界地区(青木あすなろ建設)は橋台1基(A1)と橋脚2基(P1・2)、国道4号ランプの橋台2基と橋脚1基を施工する。いずれも28年度のコンクリート打設を予定している。
桑折高架橋の下部工はこのほか、施工の省力化を図るため、H形鋼を入れ鉄筋量を抑えた複合構造も採用している。