解体業界の長年の悲願であった業種確立が成就し、ことし6月からは、いよいよ建設業法運用上の改正がスタートを切る。福井県建物解体業協会の矢野智孝会長と、前会長で7期14年務めた矢野勝士氏(吉勝重建の社長と会長で親子)両氏を同社に訪ね、今回の意義や今後の抱負などをインタビューした。
矢野智孝協会長(吉勝重建社長)は、解体業が建設業法等の一部改正で、従来の建設業許可区分における「とび・土工・コンクリート工事」から分離独立し、明確に「解体工事」として位置づけられ、29番目の業種確立が実現したことに感無量と相好をくずす。
また前会長で現顧問の矢野勝士氏(吉勝重建会長)も20数年も前から、解体業の全国組織『全解工連』とスクラム組み訴えてきた要望が実る大きな前進に、ひときわ感慨深く「念願はかなったが今後は各業者が個々にレベルアップを図っていかねばいけない」と、一層の業界発展へ次のステージを見据えた。
矢野会長は、前会長から受け継ぐ業界の歴史を心に刻みつつ、その一方で「確かに業種確立は我々の悲願ではあったが、許可を取りさえすれば専門性の有無を問わず、すべての業者が解体業種に認定されてしまう」危険性も改めて指摘した。「1つの業種というなら、許可をもち、建設業法や労働安全衛生法、廃棄物処理法など全法律を熟知した上で、高い技術力を備えた人(企業)が解体工事の管理をしなければいけない」と他との密接な関連の中で専門性や責務を位置づける。併せて過去にあった事故や不適正な事案など改正の背景も直視し「管理能力を含めた実力をしっかりと備え、発注機関には解体施工管理技士の活用と(我々自身は)若手の人材育成、そして解体業界を魅力ある業界に高めたい」などと、進むべき方向性を示しながら、力強く抱負を語った。
矢野協会長は、とりわけ若手の活躍に熱い視線を注ぐ。「これからは若い人の時代です。若手の技術力をどんどん高めていけば全体的な技術力は絶対に上がるはず。若い技術者が率先して管理し、会社の組織(システム)も併せて整えば、魅力ある解体工事業となり、おのずと個々の会社も成長していく」と好循環をえがく。理想は「若い人が解体工事業をやりたいと夢や希望を持って入職し、目標のもてる業種にならなければ」と明快に語り、その実現にむけ先頭に立つ気概は十分。「解体分野は土木や建築だけでは網羅できない。解体工事施工管理技士を、もっと活用してほしい」と発注機関に対して強く要望する。
なお今改正で解体工事業を新設する施行日はことし6月から実施。とび・土工工事業の既存技術者に対しては経過措置を置き、その期間は21年3月末となっている。