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建通新聞社
2016/02/16

【大阪】府咲洲庁舎 どのレベルで検討するの

大阪府咲洲庁舎の長周期地震動対策を検討する専門家会合が2月10日に始まった。ただ、現時点では、同庁舎を危機管理用施設(高い耐震性能が必要)か、または通常の高層建築物として位置付けるのか、いわば検討の前提条件となる対策レベルが明確にされておらず、両にらみで検討が進められる見通しだ。府は、ことし夏ごろを目標に対策方針を整理する考え。
 会合では、内閣府の検討会が2015年12月にまとめた長周期地震動の検討内容を説明。その上で、咲洲地区における地震動の作成手法について議論した。
 対策レベルについては、専門家から「危機管理用施設か、それとも通常の高層建築物として検討するのか」との質問があったが、大阪府総務部の担当者は即答せず、「対策検討を見てからになる」と回答した。
 咲洲地区の地震動推計に当たっては、大阪堆積盆地構造の最新知見を反映するほか、構造解析をするために長周期地震波形だけでなく、短周期地震波形を含めた広帯域の地震波形で検討することになった。
 地震動作成手法は、ハイブリッド法とし、対象周期は0・1〜10秒。最大クラス地震の震源モデルでは、破壊領域、強振動生成域の配置、地震モーメント、応力降下量、破壊開始点は内閣府の検討と同様とする。破壊過程のばらつきについては、関口・ほか(2006)モデルにならい、破壊伝播速度、断層すべり量ともに揺らぎを与える。
 地下構造モデルは、大局的モデルを内閣府の検討と同様とし、大阪堆積盆地についてはIwaki and Iwata(2011)モデルを使用する。地表面のせん断波速度は、工学的基盤(350b/秒)。
 地震動作成には3カ月程度かかるため、次回会合は5月ごろを予定。専門家からは、国土交通省住宅局がパブリックコメント手続きを進めている、「超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策」の動向を踏まえて議論を進めることなども提起されている。
 専門家会合は、井上一朗京都大学名誉教授・日本建築総合試験所副理事長試験研究センター長ら、8人で構成。事務補助は、日建設計(大阪市中央区)と一般財団法人地域地盤環境研究所(大阪市中央区)が担当。
 東日本大震災では、咲洲庁舎(高さ256b、55階建て)で約360カ所の損傷が発生。建物中層部(8〜17階、21〜26階)に制震ダンパー計292台を設置するなど一定の対策は済んでいる。

提供:建通新聞社