富山県建設業協会青年部(角地久和部長)の新春講演会が3日、富山市内のホテルで開かれた。国土交通省の元技監・大石久和氏(国土技術研究センター国土政策研究所長)の講演とあって、定員を上回る170人が参加した。後援は東日本建設業保証富山支店、富山県建設技術センター。
冒頭、角地部長が「一人ひとりが建設業に携わる自信と誇りを持ち、技術の研さんに努め課題に対応することが肝心。講演会を通し、われわれが今後どう考え、行動していくべきかをともに考える機会になれば幸い」とあいさつ。
大石氏は、『インフラストックが切り開く「明るい未来」』(「公共事業」から「インフラ」への脱皮を)と題し講演。まず、「先進国で日本だけが公共事業費を下げてきた。結果として国民がより安全に効率的に快適に暮らせ、活動できる環境整備を遅らせた」と指摘し、「公共事業は本来、インフラストラクチャー。社会を支える基礎構造との意味だが、日本語にはない。世界の首脳はインフラが重要と繰り返し発言している」との背景を説明した。
さらに、「公共事業とは、国土に働きかけて国土から恵みをいただく行為。国土は働きかける度合いに応じて、われわれに恵みを返す」と述べ、「日本は全国で地震が起きる可能性があり、降雨が一挙に流れる河川も多い。世界と比べ国土の条件が違う。働きかけの度合いに応じて恵みを返す、インフラの概念と同じ」との考えを示した。
一方、「政府の会計は、一般税収+赤字特例公債のAと建設公債のBに分かれるが、Aは余裕がなく、Bに回っていない。Bは財政法の規定でAに使えない」との実情を話し、「公共事業の資金はすべて建設国債。公共事業費を削っても他の予算費目に回らず、逆に増やしても他の予算費目を圧迫しない。公共事業費を減らすことは、内需を減らしてデフレを促進し、経済成長を減速するだけ」と解説した。
また、「公共事業とはインフラストックを形成すること。将来世代に渡って人々の生産や消費を支える「社会の基礎構造」を整備することで、暮らしに安全、効率、快適をもたらし、国の経済成長や経済競争力を生み出す」と話した。
加えて、総人口の減少と生産年齢人口が減少する中、「一人当たりの労働生産性をいかに高めるかが重要」とし、首都高速道路・中央環状線全通を例に「新宿・羽田間は40分から19分に短縮、都心環状は交通量が5%減、渋滞が50%減少し、生産性を上げた。富山で道路ができても同様のストック効果がある」と訴えた。
先進各国首脳がインフラ投資への重要性を表明した発言を紹介し、「日本は誰もお金を使わない。それでは経済は回らない。政府が使うしかない。借金が多く公共事業はやらないとの話しもあるが、日本国債の信頼度は世界でトップ。競争力と経済成長を獲得するには投資が必要」との持論を展開した。
他方、地域建設業の役割として、「『公共』事業に携わる自覚と責任が大事。土木技術者のいない市町村があり、これからは公物管理の時代。地域インフラの町医者の役割もある。建設業は地域社会の基幹産業として地方創生のかなめ」と語ると同時に、「若者をコンビニのバイトなど、何年経ってもスキルが身につかない業態で使ってよいのか。国家の衰退であり、若者を呼び込む魅力ある建設産業にしなければいけない」と力説した。
最後に「公共事業とは政治の実践行為。政治に理解させるため、白票でも投票にいくべき。若い人が投票しないと、次世代の意見が政策に反映されない」とし、「公共事業が減っているのは日本だけ。状況が変わるのを信じて頑張ってほしい」と結んだ。