日本工業経済新聞社(山梨)
2016/02/04
【山梨】県高度医療検討会が報告書
本県の高度医療のあり方を検討していた有識者による委員会(委員長=今井立史県医師会会長)は2日、報告書を後藤斎知事へ提出した。報告書では、重粒子線治療などの高精度放射線治療施設は「50億円の建設費が見込まれ、効果的でない」と指摘。一方で、発達障害施設については「入所や通所により総合的な治療・支援を行う施設の整備について視野に入れ、高度で先進的な医療のセンターを」と望んでいる。
報告書を受け取った後藤知事は「できるだけ早期に(整備などの)結論を出していきたい」と応じた。
報告書を提出後、今井委員長は「重粒子線治療などは優れた治療法であり、今後も検討をいただきたい。発達障害施設のセンター化は知事にできるだけ早く決断してほしい」と望んだ。
検討委員会は、後藤知事が昨年の知事選挙で「がん治療として期待される重粒子線治療など、高度な先進医療を導入し、県内医療の高度化を図る」と公約に掲げたことを受け、本県において適切で効果的な高度医療のあり方を協議。3回の会合を経て報告書をまとめた。
報告書では、重粒子線治療などの高精度放射線治療施設について「広島県等の先進例を見ると、本県への導入は50億円の建設費、年間9億円の運営費の赤字が見込まれ、効果的ではない」と記述。最先端の治療法であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)施設についても、収支予測での45億円の建設費などを考慮すると、本県への導入は見送るべきとした。
脳血管疾患センター、循環器病センターについても、高額の建設費などから現在の医療体制に加える必要はないと指摘。こども病院についても導入を見送ることが適切とした。長寿医療センターも県レベルで新たに設置することは適さないとした。
一方、発達障害施設については、本県では、あけぼの医療センターなどで治療が行われ、全国的に診療機能を有する施設はまれであり、現在は診療待ちの状況で、診療機能に加え、相談支援機能、地域支援機能などの強化により、医療の高度化とともに包括的な支援機能の強化が図れると分析。
さらに、県立中央病院などとの連携により、「入所や通所により総合的な治療・支援を行う施設の整備を視野に入れて、高度で先進的な医療のセンター化を進めていくことにより、全国に先んじた高度な医療提供体制を築くことが可能と考える」と、センター化を求めている。
報告書を受けて後藤知事は「まずは来年度からどうするのか、決めていかなければならない」と述べた。
県によると、がんは本県の全死亡者数の第1位で、がん検診受診率も全国で上位(2013年)。がん診断連携拠点病院は中北医療圏に集中し、空白である峡東医療圏は山梨厚生病院を地域がん診療病院として整備した。峡南医療圏は中北医療圏がカバーしている。