笠原建設(糸魚川市大字能生1155−6 鈴木秀城代表取締役社長)が進める「越後香素杉」事業が、新潟県の15年度建設業新分野進出優良事業に選定された。
この事業は、社有林で間伐した杉材を使い、「越後香素杉」のブランド名で住宅内装製品を製造・販売するもの。特徴として、主流の高温乾燥でなく45度の超低温で乾燥させることで、木材の色つやと香りをそのまま保持できる。油分が豊富に残るため、塗料や防腐剤などを添加する必要がない。そのため刺激に弱い子供から高齢者まで安心・安全に使うことができる「生きた杉材」として、住宅や学校・保育園、特別養護老人ホームなどで活用されている。また、文化財に影響するギ酸や酢酸の拡散量が極めて少ないことから、糸魚川市内にある宝物殿の建替で全面利用された実績がある。
生産にあたっては、社有林で間伐を行い、同社が保有する超低温木材乾燥機を使って乾燥させる。率先して山の手入れに取り組み、林地や周辺の森林整備への取り組み意欲を向上させることで、地域森林の荒廃の歯止めと地域林業の再生に寄与。また、木製品の製造によって、地場製材会社への製材依頼や地域工務店への住宅内装材提供を行い、地産地消と経済活性化に貢献している。森林の副産物である山菜の販売も手掛けるようになった。
審査では、地域資源である杉材に加え保有する建設機材を有効活用した点と、数少ない超低温木材乾燥機を導入し付加価値の高い木材に仕上げた点が評価された。鈴木社長は「公共事業が減り、どうにかしようとしていた時、所有する山林を活用しようと思いついた」ときっかけを語る。苦労した点は林業に携わるノウハウがなかったこと。「作業の効率性に重点を置いて林道をつくるのはそれまでなかった観点だった」と振り返る。今後の展望について「健康志向の人がよく求める傾向。関東地方でも口コミで広がっており、手応えがある。広くPRしながら、地域の工務店や製材会社と一緒に取り組みたい」と語る。