「(北陸新幹線敦賀以西)ルートは多角的検証により結論を見いだすことになるが、新幹線着工5条件を精査する中で自ずと従来の閣議決定された方針が堅持されると思う」―。13日に金沢市内のホテルで開かれた北陸3県議会議長会議の終了後、記者団に囲まれた福井県議会の仲倉典克議長は、敦賀以西ルートに関し、昭和48年に閣議決定された同県小浜市付近や京都府亀岡市付近を通って大阪へ至る「若狭(小浜)ルート」の正当性を改めて主張した。
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新幹線着工5条件とは、国土交通省の整備新幹線問題検討会議が09年12月24日に決定した、(1)安定的財源見通しの確保(2)収支採算性(営業主体の収支改善効果がプラスであることを確認)(3)時間短縮などの投資効果(4)営業主体としてのJRの同意(5)並行在来線の経営分離への地元自治体の同意―の5つだ。
ルートの候補としては、福井県および地元停車駅「西京都駅」(仮称)を期待する京都府亀岡市が支持する「若狭(小浜)ルート」、三日月滋賀県知事が支持する滋賀県米原市で東海道新幹線と合流する「米原ルート」、府内の南北格差解消の起爆剤として山田京都府知事が支持する小浜ルートを同府舞鶴市までさらに延伸する「舞鶴ルート」、琵琶湖西側を通り京都駅を経由して大阪へ至る「湖西ルート」、JR西日本が内部で検討中とされる小浜市付近、京都駅をそれぞれ通る「JR西ルート」、ルート問題に関する与党検討委員会の西田昌司委員長(参議院議員、京都選挙区)の私案「小浜―舞鶴―京都駅―大阪・天王寺―関西空港ルート」がある。このうち最も合理的な湖西ルートだが、走行路線が長くなり多額の負担金や湖西線の第3セクター問題が発生する滋賀県が難色を示しており、地元同意の面で難しそうだ。
JR西日本ルートは、米原ルートとなった場合、米原〜新大阪間がJR東海エリアとなり自社収入が減少することを嫌ったJR西が内部で検討中とされる。途中、京都駅を通すことで収入増加が図れるのがポイントだ。
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ルート問題についていち早く口火を切ったのは石川県議会。中京圏とのつながりが途切れることを懸念して昨年9月定例会で米原ルート支持を決議したが、この決議に対しては福井県議会の仲倉議長が同年12月に石川県議会の中村議長を訪ね、「独断的だ」と抗議した経緯がある。
この日の議長会議では、北陸新幹線敦賀以西間について年内にフル規格による整備方針及びルートを決定するよう国へ求めていくことで一致。意見交換では福井県議会の仲倉議長が「新幹線着工5条件を一つひとつ精査すると、自ずとどのルートがいいのか必然的に見えてくる」と述べ若狭(小浜)ルートの優位性を主張する一方、石川県議会の中村議長はルート問題に触れないまま敦賀までの更なる工期短縮や大阪へのフル規格による早期整備を、富山県議会の横山栄議長は京都を通って大阪まで早期開通させることの重要性を訴えた。
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「大阪までのフル規格による早期開通」という総論では3県が一致するものの、ルートという各論に入ると相反する石川県議会と福井県議会。今年からは与党検討委員会においてルート問題について議論が本格化することになっており、より多くの自治体の支持、JRの同意が得られるかがカギになりそうだ。