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日刊建設タイムズ社
2016/01/06

【千葉】永田健・千葉県県土整備部長が死去/訃報

 永田健・県県土整備部長が、昨年12月31日午後8時48分、療養先の病院で死去。56歳だった。
  永田氏は、1959年1月2日生まれの愛知県出身。82年3月に名古屋大学工学部土木工学科を卒業後、82年4月に建設省(当時)北陸地方建設局企画部技術官理課に入省。02年4月に国交省中部地方整備局岐阜国道工事事務所長、04年に市川市助役、06年7月に国交省中部運輸局企画観光部長、08年4月に愛知県建設部建設総務課付(名古屋高速道路公社企画調査部長)、10年4月に愛知県豊田市副市長、13年4月に一般財団法人国土技術研究センター道路政策グループ総括などの要職を歴任し、14年に県土整備部長に就任した。

 永田健・県県土整備部長が昨年の大晦日、56歳の若さでこの世を去った。そのちょうど2週間前の12月17日には、(一社)千葉県建設業協会の「永年勤続者(役員・従業員)功労表彰式」「千葉県優良建設工事受賞社・主任技術者功労表彰式」等に、いつもと変わらぬ元気な姿を見せ、会員を前に「我々の行っている仕事はとても大事であり、地域に貢献していることだが、自分たちが行っていることを『世の中に知ってもらう』という意識を持って取り組んでいく必要がある」と士気を鼓舞し、受賞者全員との記念撮影に応じたばかりだった。
 ◇名刺裏に「県版・くしの歯作戦」アピール
 それからひと月余り前の11月12日。県県土整備部と千葉県建設産業団体連合会との意見交換会の会場で永田部長は、自らの名刺の裏面にカラ―印刷した千葉県版「くしの歯作戦」を紹介し、構成団体の長や専門紙の記者ら一人ひとりに配って回った。県版・くしの歯作戦の紹介文には「大津波災害に備えて策定しました。千葉県版『くしの歯作戦』。万一の時は、国、県、そして地元の建設業者等が協力して被災地への支援・救援ルートを切り開きます」と記され、官民が協調して取り組む決意を、強く一般にアピールした。
 ◇業界側も高く評価
 この出来事に対して(一社)千葉県建設業協会では、11月20日発行の広報誌「建設展望」(2015年秋号)において「2014年4月に永田氏が県土整備部長に就いて以来、意見交換等の場で多様してきたフレーズが『行政・業界が同じベクトルで、優れた社会資本を整備し、県土保全、県民の安全・安心確保に貢献していこう』という呼びかけだ」と前置きし「これは部長自身の信念に近いものなのだろうが、その意志を込めた方向性を具体的な施策として落とし込み、外部に初めて示すことになったのが、この『くしの歯作戦』だったような気がする」と評価。さらに「行政は今後の展開に繋げていく必要がある。そして業界は、くしの歯状に海岸に向かうステップ2の道路や、沿岸部の津波被害が想定されるステップ3の道路が、地元建設業の守備範囲にあることを『行政と同じベクトル』でアピールしていくことが『県土と県民の安全を守る県内建設業』という評価の確立に繋がる」と解釈した。
 ◇知られていないは存在しないと同じ
 改めて12月17日の表彰式。来賓を代表してあいさつした永田部長は「本日は敢えてこの席で、我々を取り巻く環境についてみなさんと考えてみたい」と述べたうえで、5年前に発生した東日本大震災について「こちらでも雪が降りそうな非常に寒い日だった。東北地方では東北地方整備局と地元の建設業者が連携し、いわゆる『くしの歯作戦』を展開した」と振り返り、昨年の春先に放映したNHKのドキュメンタリー番組が、その作戦の内容について触れていたことに言及。「あのNHKが『消防や警察、自衛隊のみなさんが頑張ってこのルートを開きました』と。その中に建設業の『け』の字もないというこの瞬間に、私は大きなショックを受けた」とした氏は「それ以来、私は方々で『知られていないということは、存在しないと同じである』と言っている」と強調した。
 その本意として氏は「我々の行っている仕事はとても大事であり、地域に貢献していることだが、自分たちが行っていることを世の中に知ってもらうという意識を持って取り組んでいく必要があると思う」と述べ「我が国においては、依然として『公共事業』や『建設業』という言葉になると、何故かネガティブなキャンペーンを張られてしまうところがある。我々が黙っていては理解されない」と訴え、「本日表彰されたみなさんは、長くこの世界で活躍され、それぞれの功績を挙げられた方々である。是非ともそれらを(声を大にして)発信して頂きたい」と呼びかけた。
 ◇次の世代により良いものを残すこと
 一方で「海外の事情はどうなのか」と述べた氏は、千葉県版・くしの歯作戦と同様、第2弾となる特別仕様の二つ折りの名刺を取り出し、アメリカのオバマ大統領、イギリスのキャメロン首相、ドイツのメンケル首相などの世界的リーダーたちが言及した社会基盤について紹介。これは、氏が国土技術研究センター道路政策グループ総括を務めていた頃の直属の上司で、師と仰ぐ同研究所長の大石久和氏の講演資料から引用したものだった。
 さらに、日本に目を向けた永田部長は、天皇陛下の教育係をされた元・慶応義塾の7代目塾長である小泉信三氏の言葉を引用。「我々はこの日本の国土を祖先から受けて子孫に伝える。森鴎外が『生まれたままの顔を持って死ぬのは恥だ』と言ったのと同じように、我々もこの国土を、受け取ったままのものとして子孫に残すことは恥じなければならない。より良いものとして子孫に渡していくべきだと言っている。まさに我々の仕事は次の世代により良いものを残すことである」と主張。
 この言葉が、本紙の記録する永田部長の公の場での最後のメッセージとなった。k_times_comをフォローしましょう
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