鹿児島建設新聞
2015/12/19
【鹿児島】ジレンマ〜建設業の憂鬱〜 工業系学生の実態
景気が上向きつつある中、建設業における人材の需要≠ニ供給≠フバランスは崩壊。学生らは「売り手(優位)市場」となった今、給与や休日、福利厚生など満足度を高められる企業をじっくり選択できるようになった。
今回実施したアンケートでも、建設分野への進学・就職を考えている学生らの勤務地(候補)は、6割近い1017人が「県外」と回答。多く学生が県外に出たいという結果になったものの、「将来、地元に戻りたい、地元で働きたい」と考えている学生が4割近くに上った。
学生らが就職先を決める際、何に注目しているのかも気になるところ。八つの選択肢から優先順位で回答してもらうと、最も重要視するものとして1074人が「給料」と回答。次いで770人が「勤務地」、459人が「休日」、332人が「やりがい」と答えた。
しかし、政府統計による労働時間は全産業平均が1808時間なのに対し、建設業は2105時間と長く、給与面でも全産業平均の年収529万円に対し、建設業は391万円と低い。このような建設業界に対して、若者が魅力を感じるはずがない。さらに、入職した高校生の3年以内の離職率が48・5%もあり、人材を確保しても定着が困難である現実も見え隠れする。
このような労働時間や給与面での実態もさることながら、工業系で学ぶ学生でさえ、建設業に抱くイメージは必ずしもいいものばかりではない(12月18日号3面参照)。それ以上に驚きを隠せないのが災害時での貢献活動≠フ存在を「知らない」と回答した学生が2367人と、「知っている」と答えた765人を大きく上回った。
実際、東日本大震災後に行った「災害復旧で一番貢献したのは」との意識調査でも、一般市民が抱くイメージは「@自衛隊→A消防B市民ボランティア……F建設業」の順。世間から建設業が評価されていない現状が浮き彫りとなり、裏を返すとわれわれ建設業界の発信力の弱さ≠ェ露呈したともいえる。
謙虚、謙そんは日本人の美徳かもしれないが、もっと積極的に本気を出して建設業の真の姿≠アピールしないと、学生や一般市民が抱く建設業の「負のイメージ」を払しょくさせ、魅力ある産業であることを理解させるのは難しい。そのためには、業界団体の垣根を越え、さらに産官学が連携した一体的な取り組みが求められている。