福井県コンクリート診断士会(石川裕夏会長)は10日、南越前町の越前海岸沿いに架かる甲楽城高架橋および河野大橋で電気防食工事の現場見学会を開き、コンクリート構造物の塩害劣化対策で現在最も高い信頼性を持つ電気防食工法への知見を深めた。
見学会には会員約30人が参加したほか、発注者である県丹南土木事務所の職員も視察に訪れた。石川会長はあいさつで、「初の陽極設置工事の現場で貴重な機会。これまでの電気防食工事の現場とも比較して理解を深めてほしい」と今企画の主旨を説明した。
まず最初に見学した一般国道305号甲楽城高架橋は、築造から45年が経過し潮風や海水により床版や側面内部の鉄筋が腐食。田中建設(越前市)がA1からP2までの2径間の電気防食工事を受注し、公共工事では日本初となるモール陽極設置工事を採用した。
モール陽極工事は、コンクリート表面に陽極をシールで貼り付け固定具で留めるため、溝切工法に比べ粉塵や騒音を抑え、工期も約3割超短縮できるのが特長。工事現場周辺は海側に漁港があり、山側は住宅が連なっているため、同工法が採用された。
次に見て回った河野大橋は、築後約37年が経過。17径間のポストテンション方式単純T桁橋(全橋長460メートル)で、このうち14径間の電気防食工事が完了し供用済み。残る3径間を日本ピーエス(敦賀市)、田中建設、冨士土建(鯖江市)が溝切工法のチタンリボンメッシュ方式で施工中。
チタンリボンメッシュ方式は、コンクリート表面を切削した溝に陽極を固定し、電源装置のプラス側に陽極、マイナス側に鉄筋をつないで所定の電流を流し、錆の要因とされる腐食電流を消滅させる仕組み。
参加者はそれぞれの現場において、各工法の特長や電位による防錆の原理などについて説明を受けた後、作業状況を見学。施工方法や使用資材などを確認するとともに、課題や問題点なども質問した。