鹿児島建設新聞
2015/11/27
【鹿児島】ジレンマ〜建設業の憂鬱〜、インフラツーリズム
「工事現場は観光資源」。ダムや道路、橋など特長ある土木構造物(インフラ施設)を観光資源として活用する「インフラツーリズム」が、地域の振興や活性化につながる−と注目を集めている。一部でささやかれる「公共事業悪玉論」を打破する一筋の光明。その現状を追った。
国内最大級の再開発工事が進められている鶴田ダムでは2014年度、全国でも初の試みとして旅行会社や地元温泉旅館等を対象にしたインフラツアーを実施。夏休み等を活用した見学会も行うなど、期間中に約5800人が訪れた。また、旅行業者が地域の観光施設やグルメを抱き合わせて企画した有料の見学ツアーでは110人が参加した。
14、15年度にダムを訪れた見学者(4838人)のアンケートを見ても、ダム再開発(内容・概要)やダム内部、放流ゲートが印象に残り、大半が「満足している」との高評価となっている。
価値ある工場などを見学する「産業ツーリズム」、農業体験や農村民泊などの「グリーンツーリズム」と並んで、今、全国各地でインフラ施設を観光ツアーの一部に組み込んだ「インフラツーリズム」が急増している。
地域活力を高めるのはもちろんのこと、幅広い年齢層や子育て世代にインフラに対する正しい理解を図れる=u理解してもらうには一番の近道」と、官民一体となった取り組みとして情報発信が強化。特にダムや巨大橋などは人気を博しており、ある行政関係者は「一種のブームと言っても過言ではない」とほほ笑む。
そもそも、巨大な土木構造物は地域の実情に合わせて考え抜き、最適だと結論付けて整備した限定品。大量生産できない代物であるがゆえに、計画・着工・完成までに地域住民の意向や景観を反映した唯一無二≠フ構造物である。だからこそ、その地域固有の観光資源の一つとした新しい旅行形態(ツアー)が創出できたともいえる。