鹿児島建設新聞
2015/11/18
【鹿児島】県建設業青年部会、建設業入職でアンケート
「このままでは、わが子に建設業で仕事をさせたくない…」。県建設業青年部会(有川裕幸会長)が行ったアンケートで、自分の子供を建設業界に入職させることに後ろ向きの回答をした人が半数以上を占めた。給与水準の低下や先行きへの不安などが主な理由で、担い手育成の裏側にある本音が浮き彫りとなった格好だ。仕事にはやりがいを感じつつも、胸を張って入職を勧められない建設従事者の今がうかがえる。
アンケートは9月から10月にかけて、建設業に従事する技術者や営業・事務職、経営層らを対象に実施。仕事のやりがいや今後改善すべき点、魅力発信に向けた取り組みなど20項目にわたる質問を設け、男性277人、女性35人の計312人から回答を得た。
このうち、「自分の子どもが建設業に携わりたいと言ったら勧めますか?」との質問には206人が回答。その52%を占める108人が「休日出勤が多く給料が合わない」「自分が苦労しているから」「先が見えない」などの理由から「勧めたくない」と答えた。
若年者の入職増に向けた改善点で目立ったのは、給与水準の向上や休日の増加(週休二日制の実現)、年間を通した仕事の平準化−など。週休二日制の推進にあたっては、「標準工期の見直しなど、現場が余裕を持って仕事ができる環境をつくっていくことも不可欠」との意見が挙がった。
国が推進する女性の雇用促進や技術者登用に関しては、「地域の中小企業では現実的に難しい部分がある」と厳しい声を上げる一方、「建設業=男社会というイメージをなくしていく努力は必要」「現場に男女別のトイレを設けるなど女性が働きやすい環境づくりに業界全体が目を向けていくべき」など、建設業のイメージを変えていく観点から前向きにとらえる回答もあった。
■「このままでは災害対応も…」
この結果を受け、会員からは「いまほとんどの企業が安定的に仕事をできる環境にない。そんな状況で給与アップや新規雇用と言われても…」「最近の若い世代は、仕事のやりがいよりも安定した休日や給与で職を選ぶ傾向が強く、建設業界の現状と相反している」といった嘆きの声が寄せられた。
近年、学生向けの出前講座やイベントなどを通じて、建設業のイメージアップやその魅力を伝える活動に力を入れている青年部会。有川会長は「このまま若年者の入職が低迷すると、5年後、10年後に大きな災害が起こったとき、役所の職員まで現場に出てもらわないと対応が追いつかなくなる。発注者にこうした危機感を持つ人がどれだけいるだろうか」と警鐘を鳴らす。「先が見えず利益も出にくい市場環境の中で、雇用や給与を増やすことは誰だってできない。そこを改善できたとき、ようやく親も胸を張って子供を建設業に迎え入れるのでは」と見る。
「仕事のやりがいや魅力を伝えるだけでは、今の若者は目を向けてくれない」。少し残念な気もするがこれが実情。担い手育成は、その受け皿となる企業の懐(ふところ)に余裕あってこそでき得ることを改めて認識し、官民一体で根本的な課題から解決していくことが必要だ。