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北陸工業新聞社
2015/11/06

【福井】福井工大/自然生かし遊び心も実現/FUT福井城郭研究所藤森照信氏が講演/数多く建築物を観察

 福井工業大学のFUT福井城郭研究所(吉田純一所長)が主催し東大名誉教授で建築家の藤森照信氏をまねいた公開講演会は4日、福井市学園3丁目の同大で開催され、建築やデザインを学ぶ在学生を中心に、一般の建築設計関係者ら約150人が参加し聴講した。
 藤森氏は講演テーマの「自然を生かした現代建築の作り方」に沿い、自身が手掛けた建築作品を多数紹介して独特な建築観を披露した。長野県茅野市宮川の守矢家の文書を保管公開する博物館「神長官守矢史料館」はRC造だが外壁はサワラの割板などを使用し景観を損ねない配慮を施した。また2本のクリの木の上(高さ6メートル)に小さな庵室を乗せた「高過庵」は奇抜で遊び心ふんだんに、構造上の工夫点を尋ねた質問にも率直に応えた。
 氏は元々は近代建築史を専門とする歴史家で、民家は江戸時代初期に成立し、それ以前は全く単純なものだったのではと指摘。また「長い間(研究者として)客観的に建築物の詳細を観察し、いざ設計をする立場になると自分の関心のあるものしか見なくなった」と主客の見方の違いを興味深く話した。さらに自然を壊さずに取り込み、全体的な統一を試みる設計の原点とも言える建築作品にふれ、ポルトガルでみた地元絵描きのアトリエが建築と自然に全く境のないほどに溶け込むなど、建築観を大きく揺さぶる強い衝撃を受けたと語った。
 なお今企画は日本建築学会北陸支部・同北陸支部福井支所、日本建築家協会北陸支部福井地域会、福井県建築士会、福井県建築士事務所協会、福井県建築組合連合会、福井県建築工業会が後援した。
ふじもり・てるのぶ
69歳 専門は近現代建築史で遊び心あふれる設計を自ら多数手掛けている。
 講演後、藤森氏(写真左)にインタビューを試み、学生へメッセージを求めると「いろんな建築物をよく観察し良しあしを見ることがとても大切。そのなかで自分なりの見方や考え方が出来上がってくる」などと話し、同席する吉田所長(写真右)も「正確な観察の蓄積が大切」などと大きくうなづいた。また藤森氏の著書にサインを求めにきた熱心な女子学生は「先生の建築作品は繊細でとっても可愛い」などと改めて氏の建築観(スケール観)に感銘を受けて、向学心を高めたよう。

hokuriku