昨年8月の広島土砂災害の発生は、都道府県の砂防担当者を震撼させた。地権者などの同意を得られず、土砂災害警戒区域の調査・指定や対策工事が進まない現状を十分認識しているからだ。会計検査院は先日、全国の「土砂災害特別警戒区域」の砂防施設の8割が未整備であると発表し、国土交通省に是正を求めた。大分県の状況はどうなのか。県砂防課に聞いた。
県土の多くは山間地であるため、土砂災害の危険が非常に高い。県が公表している平成5年以降の土砂災害発生箇所はほぼ全県に及んでいる(図参照)。
同課によると、県内の27年8月末現在の土砂災害危険箇所数は1万9640ヵ所。土砂災害警戒区域に指定されているのは4684区域で、うち危険性が極めて高いのが4307区域と、9割を超える。警戒指定区域は土砂災害危険箇所全体の24%に過ぎないが、24年度末の14・2%と比べると短期間で大幅に上昇した。広島の災害発生以降、県が調査と指定を急いだ結果だ。同課によると広島の災害で、住民の理解も得られやすくなったという。27年度は1800ヵ所前後を調査し、今後5年間で100%調査を終える予定。
土砂災害危険箇所数1万9640ヵ所のうち、公共工事で対応が可能な箇所は半数以下の6719ヵ所(民家10戸以上や、病院、老人介護施設などのある所など)。しかし、この6719ヵ所の対策工事完了には約200年かかるという。予算などの関係で年間せいぜい20〜30ヵ所を発注するのが限界だからだ。また、着工から完成には2〜3年かかる。27年度の発注は多く、砂防対策42ヵ所、地すべり対策9ヵ所、急傾斜地40ヵ所の発注を予定している。
同課では、ハードの整備完了まで待つのは非現実的なので、住民に豪雨時は避難するなどの意識を高めてもらうように、市町村と協力してソフト面の対策充実を図っている。また、法改正で、土砂災害警戒区域については、指定ができなくても公表することができるようになった。県ではホームページで情報を提供しているが、市町村に情報を提供し、地域のハザードマップを作成するなど協力体制を整えている。
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大分建設新聞社