建通新聞社(東京)
2015/10/06
【東京】都の不調対策に一定の効果
東京都の発注する工事で不調発生率が低下し、入札参加者数が増える傾向にあるなど一連の不調対策が一定の効果を表していることが分かった。都は引き続きこれまで進めてきた制度改革や運用改善を定着させるとともに、「女性の活躍」「週休二日制」など雇用環境の改善につながるモデル工事の実施に向けた検討も進めていく考えだ。2日の都議会財政委員会で、柴ア幹男氏(都議会自民党)の質問に答えた。
入札参加者数の減少や不調の増加といった課題に対応するため、都は市場(実勢)価格と予定価格とのギャップ解消、主任技術者の専任配置の条件緩和、発注標準・JV基準の見直し、最低制限価格制度の適用範囲の拡大、全体スライド条項の改正といった不調対策を打ち出し、ことし4月に本格的に適用を始めた。
その結果、2015年度の不調発生率(8月末まで)は、建築で17・4%、土木で8・9%、設備で3・5%、全体で8・2%となり、13〜14年度の急増傾向に一定の歯止めが掛かった格好となった。
財政委員会では、都側がこの状況とともに、議会付議案件の大型工事で入札参加者数も増加傾向にあると説明。14年第2回・第3回定例会では対象となった15件の工事の中で3者以上参加のあった案件がゼロだったのに対し、15年第2回・第3回定例会では「10件中4件」「8件中5件」に増加。また、中小規模の工事でも参加者が増加する案件が増えており、「これまで進めてきた制度改革、運用改善を確実に定着させることが重要」だとした。
また、現場の労働環境改善の必要性を訴えた柴ア氏に対し、都側は「都発注工事での週休二日制の実施に強い要望がある」と答弁。発注者の責務として公共工事の担い手を中長期的に確保していくため、「若者や女性の就業、それにつながる社会保険の加入促進、週休二日制の実施といった環境整備を進めるため、今後、モデル事業に実施を含めた効果的な取り組みを検討していく」との方針を明らかにした。
柴ア氏は、労働環境改善の取り組みの一環として都が14年度に始めた社会保険労務士による特別調査にも言及し、今後の取り組みを尋ねた。
都側は、14年度に土木工事のみ3件で実施した調査を、15年度は電気設備工事と空調設備工事にも拡大し、土木2件と各設備1件の計4件で実施すると説明。併せて下請け事業者の調査対象を増やすとともに、現場担当者へのヒアリングや記録の確認などにより詳細な労働条件・環境を調べる考えを示した。
さらに、同調査は低入札価格調査制度の案件を対象としていたが、受発注者ともに担い手の確保・育成に取り組む必要があるとの判断から、今後は「16年1月1日以降に公表する財務局発注の全ての工事」に拡大した上で選定する。