鹿児島建設新聞
2015/09/18
【鹿児島】ジレンマ〜建設業の憂鬱〜 災害時の危機管理
災害時に機動力や人的動員で威力を発揮し、市民の生命と財産を守る一翼を担っている建設業。その存在価値が高まる一方で、予期せぬ事態に対処できずに慌てふためく様子も散見される。その分かれ目は危機管理≠ノ対する意識の優劣が大きく左右している。
「事務所が立入規制区域に入ってしまったらどうしよう」「停電で数日間何もできなかった」。
先の桜島火山噴火警戒レベル4(避難準備)への引き上げ時や、台風15号での停電の長期化などの際に、建設業の経営者たちがそろって口にした。
東日本大震災から4年半。未曾有(みぞう)の大震災を目の当たりにした市民は、自宅の免震や耐震化を図ったり、非常食等の備蓄やハザードマップ作成、地域との連携などを模索。自己防衛としてでき得るさまざまな取り組みを行ってきた。
建設業者も万が一に備え、速やかな復旧作業に貢献するために復旧関連機材等を備蓄。さらに、非常時の連絡体制や発電機を常備するなど、危機管理意識を高める業者が急増した。
だが、いざ天災が発生すると、予想だにしないことに振り回され、困難に陥るケースも少なくない。
8月下旬に薩摩半島西岸を襲来した台風15号は、薩摩川内市に甚大な被害をもたらした。特に「風台風」であった今回の台風は、いたるところで木をなぎ倒した。被害は断線465カ所、倒木514カ所、電柱折損等65カ所などの1310カ所に及んだ。
それに伴い、25日午前4時時点で5万9400戸(停電率92.8%)、翌26日午前10時時点で2万7100戸(同42.8%)、3日後の28日同時点でも3700戸(同5.4%)が停電。完全復旧まで最長5日間もの停電が続いた地区もあり、想像をはるかに越えた影響が生じた。
もちろん、復旧には九州電力や九電工の延べ2346人が従事。地元の叶北電工は関連グループや協力会社など総出で復旧に尽力するなど、同市内の電気工事事業者は不眠不休で作業にあたった。
しかし、電気が来ない建設業者はじだんだを踏む思いで停電復旧を待つしかなかった。
停電によって山間深い場所に立つ携帯電話の基地局も電気が通わず、携帯電話が不通。非常用に保管してあった発電機を稼働させるも、低価な発電機は電圧が安定せず、パソコン業務を行うと突然シャットダウンする恐れがあり、貴重なデータ確保のためには安易に作動させることができなかったという。
もちろん、電子入札はもとより、電子メールすら見ることができず、停電が復旧して数日後にようやく入札設計図書などを見ることができた建築業者の社長は「4時間程度で復旧した市街地の業者と比べ、見積もる時間に余裕などなかった」と振り返る。