三重県企業庁は、2013年度から休止していた「北中勢水道用水供給事業」を15年度から再開する。取水・導水施設について、20年度から工事に着手し、25年度の供用を目標とした。取水・導水施設に先立ち、15年度から大里浄水場の設備整備の設計に入る。事業費は北勢系が約40億円、中勢系が約336億円で、計約376億円を見込んでいる。事業再開は、受水市町からの水源の多重化を求める要望に基づき協議・検討していた。7月に再開が決定し、8月21日に行われた、県公共事業評価審査委員会で再評価の対象として審議され事業の継続が認められた。
北中勢水道用水供給事業(第2次拡張事業)のうち、北勢系(長良川水系)は、桑名市など4市4町を給水対象として、1日最大給水量4万7600立方bを目標に、1998年度から建設に着手し、01年度に一部給水を開始した。長良川河口堰(せき)からの取水・導水施設が未整備のため、木曽川の弥富揚水機場から取水した水を播磨浄水場に送り、1日最大給水量1万8000立方bを対象地域に送水している。水需要の伸び悩みから08年度に計画を見直し、1日最大給水量1万8000立方bに変更した。
中勢系(長良川水系)は、津市、松阪市の2市を給水対象として、1日最大給水量8万3584立方bを目標に、93年度から、給水区域の導水管・導水施設の建設に着手し、98年度に一部給水を開始した。早期に供給開始を行うため、既設の北伊勢工業用水道施設を暫定的に使用し、四日市市内の分岐点で、中勢系の水道用導水管に接続し、鈴鹿導水ポンプ所を経て、1日最大給水量5万8800立方bを対象地域に送水している。水需要の伸び悩みから08年度に計画を見直し、1日最大給水量5万8800立方bに変更した。
現在の1日最大給水量と変更後の計画水量が同数であるため、事業再開による新たな給水量の増加はないものの、平常時・非常時の安定供給体制の構築、地下水の補完水源の観点で、受水市町から水源の多重化を求める声が挙がり、本来の水源である長良川から取水する整備を県など関係機関と協議し、中止していた事業を再開することになった。この際に、事業期間は、中止前に予定した導水管渠工事の13年度着手を7年延伸し、20年度とし、事業完了期間も17年度を24年度とした。現行の水源のルートも多重化の一つとして非常時の利用を想定していく。
具体的な工事内容を見ると、長良川取水所(口)を長良川河口堰の直上流2`以内に設置する。取水口工事は18年度に調査、19年度に設計を行い、20年度から工事に着手し、3カ年程度で整備する計画。取水能力は、北・中勢系を合計した日水量7万6800立方bに、取水損失として想定する7%分を加算した約8万2000立方bが見込まれる。
導水管は、取水口から播磨浄水場などを経て、四日市市内の分岐点までの延長3万4900bを敷設する。管径は、取水口から播磨浄水場まで径1100_、播磨浄水場から山村浄水場までが径1000_、山村浄水場以南が径900_を予定。管種は鋼管を想定している。導水管ルートは、北勢系の木曽川用水(岩屋ダム)を水源とする系統の導水管ルートにほぼ沿った形で計画し、市道などの公道下に敷設する。
施設関連では、大里浄水場(津市大里山室町、98年稼働)の設備を改修する。中勢系では、現在、北伊勢工業用水道供給事業で一次処理された低濁度の原水を四日市市で分岐し、鈴鹿導水ポンプ所で導水しているが、今回、導水施設の整備により、一次処理されていない原水が直接、導水される。このため、15年4月改正の水質基準(ジクロロ酢酸などの基準強化)に合わせて、沈澱池と活性炭注入設備を設置する。15〜16年度に基本・詳細設計を行い、17年度から3カ年程度で設備工事を行う計画。
提供:
建通新聞社