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鹿児島建設新聞
2015/09/01

【鹿児島】災害時での存在価値(上)(鹿児島建設新聞 ジレンマ・建設業界の憂鬱)

 自然災害は時として、われわれ人間の手に負えないほどの甚大な被害をもたらす。と同時に、有事の時にこそ建設業が誇る機動力や人的動員が効果を発揮し、その存在価値も高まるもの。しかし、建設業に課せられた使命≠全うするために尽力する姿に光が当たらない現状に、不満の声が聞こえる。
(前原和彦・報道部長)

■機動力や人的動員で貢献

 不謹慎だが、先日、ある関係者が「今年は災害の当たり年だ」と小声でつぶやいた。

 長雨がひどかった6月は、本県の大動脈である国道10号線が土砂崩壊によって2度にわたって通行止めに。6月下旬から7月上旬にかけては、垂水市牛根地区深港川で土石流が三たび発生。幹線道路の国道220号が幾度となく通行止めとなった。

 先日襲来した台風15号も、猛烈な強風によって、県内全世帯の約4分の1に当たる28万5000世帯が一時停電。また、各地で建物倒壊や倒木などの被害に見舞われた。

 ライフラインの断絶や家屋倒壊などは市民生活に影響を及ぼすだけでなく、その爪痕は地域経済や景観などさまざまな面にも影響が生じる。

国道10号鳥越トンネル法面崩壊の応急作業 鹿児島市の鳥越トンネル磯側坑口上部の法面が崩壊した際、九州地方整備局鹿児島国道事務所は1日に数万台もの交通量がある国道10号の通行を止める苦渋の選択を迫られた。しかし、「2次被害を食い止めろ」「国道10号の1日も早い開通を」と昼夜を問わない応急作業を敢行。法面上部に金網を設置しモルタルを吹き付け、崩落土砂の除去やH鋼の支柱立込など、協力要請した地元建設業者と一緒に作業に奔走した。

 現場に何度も足を運んだ福本仁志所長(当時)は「地元の建設業者が不眠不休で作業に当たってくれたおかげで早期復旧できた」とその労をねぎらった。

垂水市深港川での土石流除去作業 深港川の土石流では、国道に架かる深港橋に大きな岩や土砂が堆積。河川断面を三度にわたってふさぎ、川の流れを遮ったため、垂水市は垂水市建設業組合と締結した「災害時における応急対策に関する協定」に基づき、鰹纈テ建設と叶X組に依頼。両社は深港橋の上・下流でバックホウや大型ブレーカー等を投入。河口部では叶X組が台船を投入して浚渫作業にあたった。

■献身的な姿勢に光当たらず

 いずれにせよ、復旧作業を担った業者は不眠不休の対応に迫られる。現場では「いつ2次被害に遭うか分からない」と作業員の本音が漏れるなど、ひっ迫した緊張感に包まれることも。
 しかし、現実的には建設業の献身的な取り組みに光が当たらない。一部の市民やマスコミには「やって当たり前」的な雰囲気があるのも否めない。

 そのような中、災害警戒本部会議後に尾脇雅弥垂水市長が「地元業者の迅速な対応で被害が拡大することなく、今を迎えられている」とマスコミに向けて発信した言葉が、ありがたく感じた。