新建新聞社
2015/09/01
【長野】「担い手確保」へ独自策を加速 県建設業協会
建設業界の担い手確保・育成が課題となる中、県建設業協会(藏谷伸一会長)は若年技術者の就労促進に向けた活動を強化している。建設業に興味を持ち、建設業界への就職を目指す若者を増やそうと、県内で建築、土木を学ぶ高校生の資格取得をサポートしている。
協会が今年1月にまとめた、会員対象の27年度新規採用予定についてのアンケート結果によると、会員企業145社の求人(技術職)518人に対し内定者は173人とわずか3割程度にとどまり、求人したものの内定者がない企業は半数近い72社に上った。
こうした状況に危機感を募らせた協会は、若年技術者の確保につなげようと、昨年始めた県内にある工業高校などで学ぶ生徒の建設系の資格取得を支援する取り組みを大幅に拡充。8月に土木、建築それぞれの2級施工管理技士の資格試験に向けた準備(受験対策)講座を計3回(1回=3日間)開催した。同講座は、長野工業高校、南安曇農業高校などの生徒91人が受講。試験は土木が10月、建築が11月に行われる。土木については会場が東京、名古屋と遠いため、協会の負担でバスを借り上げ送迎まで行う。
協会は、建設業振興基金の補助金と自前の財源を組み合わせて、生徒たち受験にかかる費用を助成。テキスト代を含め通常3〜4万円かかるところを、協会のサポートにより生徒の負担は8000円で済む。
協会では、受験や資格取得を通じて建設業への興味と建設業界に進む意欲が高まると期待する。建設関係企業を目指す就職活動では、資格を持っていることは大きなアドバンテージになる。また、協会が会員に対して行った新規採用後の離職者についてのアンケート結果(27年5月)では、高校卒業者の就職後6年以内の離職率は38・6%と、短大・専門学校卒業者に比べ約15%、大学・大学院卒業者と比ぺると20%以上も高く、実務経験とセットで上位の資格(1級)につながる資格は、離職の歯止めといった効果も期待される。
■県教委と意見交換 建築・土木の定員増など要請
こうした活動と並行し、協会では県内工業高校の定員の増加や建築、土木学科の新設・増設を知事や県議、県教育委員会などに訴える。8月26日に行われる県教委との意見交換でも建設業を取り巻く現状説明とあわせて、具体的な要望を伝える方針だ。
担い手確保・育成策では、県との共催により工業高校の生徒らを対象とする現場実習・見学会を継続して実施、女性(技術者)の活用推進や、若者らに建設業の魅力を伝えるPR用のDVD制作なども進める。また、官民協働により技術者・技能者を育成する「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム」の立ち上げに向けた調査にも着手した。
建設産業では、今年4月の「担い手3法」全面施行を受け、将来を担う若者を呼び込むため、経営・労働環境の改善に官民挙げて取り組む。協会では、こうした足元の環境整備が進む状況を追い風に、独自の担い手確保・育成策の展開を加速。人口減少社会で地方の活力が問われる中、防災・減災やインフラ老朽化対策といった重要な役割を持続的に担っていける足腰の強い産業としての基礎固めを目指す。