トップページお知らせ >地方ニュース

お知らせ

地方ニュース

北陸工業新聞社
2015/09/01

【石川】受け継がれる建築の生命/まなんで民家すまい塾40/古民家再生の会特別セミナー開く/町家が街なかの起爆剤/一軒一軒その価値を説く/400年のまちなみがブランド/山野金沢市長が講演

 有限責任事業組合(LLP)古民家再生の会(赤坂攻会長)は8月29、30日の2日間、金沢市長土塀の竹村家住宅で「古民家再生のすすめ」をテーマに、「内見会+まなんで民家!すまい塾40 特別セミナー」を開催し、市民や建築関係者らが参加した。
 これは昭和初期に建てられた町家である竹村家住宅(W造2階建て延べ175・34平方メートル)の再生工事が完了したことに併せて企画された。
 初日の29日は1部として山野之義金沢市長が「金沢の目指すまちづくりと金澤町家」と題して講演したほか、赤坂会長による古民家再生の実例紹介、2日目の30日にはパネルディスカッションなどが行われた。
 30日は1部に「竹村家再生ビフォー&アフター」として赤坂会長が再生工事の解説を行った。2部は古民家の活用方法についてのパネルディスカッションで、赤坂会長がコーディネーターを務め、4名のパネラーが意見を述べた。
 この中で石浦裕治金沢市歴史建造物整備課町家保存活用室長は「金沢は戦災や大きな災害に遭っておらず、5000棟以上の町家が残っており、現在、そうした古い建物改修の動きが加速している」と述べ、金澤町家再生活用事業の概要を紹介した。
 喜多浩一金沢市議は町家に対する市民の価値観の共有が必要とした上で「これからは街なかに住んで、広がり過ぎたまちを小さくしなければならない。クルマ社会を見直し、LRTを実現して街なかを大事にして欲しい」と強調。増田達男金沢工大教授は「金沢は本来、武家屋敷の文化だったが、歴史の断絶と新建材の乱用、駐車場の弊害が起きてしまった」と指摘し、「今後は再生から新生も重要になる。アメリカナイズで失ってきたもの、街なかに住む魅力、クルマに乗らない生活が大切。町家を活性化の起爆剤にすべきで、京都では不動産業者が町家の価値を見い出している」と述べた。
 馬場先恵子金沢学院大教授は「金澤町家研究会が設立から10年が経過し、オーナー登録やユーザー登録が行われている」と述べ、「欧米では移り住む習慣があって、歴史的な建物を購入する際は修繕履歴もある。町家をうまく売買、流通するシステムができればいい」と指摘した。
 会場から「町家に住んできたが今までは一度もいい家だとは思わなかった。50歳を過ぎてようやくその価値がわかるようになった。どう子孫に伝えていけばいいのか」との質問に対し、赤坂会長は「(家の価値は)見た目ではない。頑固親父になってもらい、一軒一軒、その価値を説くことが大切」と述べ、会場を沸かせた。
 初日、金沢市の山野之義市長による講演「金沢の目指すまちづくりと金澤町家」が開かれた。
 この中で市長は、天災や戦災を免れた金沢市には4つの重要伝統的建造物群保存地区をはじめとする歴史文化遺産が多く残っていることや、69年の伝統環境保存条例制定を皮切りに、前市長時代には、こまちなみ保存、屋外広告物、用水保存、斜面緑地保全、寺社風景保全といった景観に関する多くの条例が制定されたこと、また、町家保存に一定の理解が進んだ現在でも毎年約140棟の町家が解体されていることを紹介し「金沢の歴史文化資産である金澤町家の保全、活用は急務の課題」と訴えた。
 その対策として05年に町家情報バンクを開設し、所有者と住みたい人との仲介に乗り出していることや茨木町にある旧米穀店を改修して16年秋に金澤町家情報館として再生すること、金沢職人大学校を通じて人材の育成に努めていることを説明し「400年のまちなみが金沢のブランド。市としては前市長時代から町家を守っていくことに価値観を見い出しおり、思いは私も同じだ。町家という個人財産に市費をつぎ込むことについては議論があるだろうが、努力していきたい」と締めくくった。
hokuriku