福井県道路構造物保全協会(筧純治会長)初の現場研修会が27日、00年に閉鎖した旧県道鯖江・織田線上の旧石生谷トンネル内で行われ、道路管理者の行政職員やコンサル、同協会の正・賛助会員ら約80人が参加し、損傷や劣化状態を調査する方法など実際の対策工事から熱心に学んだ。
現地集合後、参加者はたちは早速、2班に分かれトンネル内へ。調査内容は帝国コンサルタントの担当者が説明に当り、現在のNATM工法以前に多用された矢板工法(通称・在来工法、60〜80年代)では十分な防水機能がなく漏水が多くみられ、覆工背面に空洞が発生しやすい弱点を指摘し、点検上の着眼点に挙げた。また用意された足場の上に乗り、トンネル上部の損傷・劣化部分にまで間近にみて、施される3つの工法それぞれの特長点に理解を深めた。
講師は漏水止水工の高圧注入止水工法でTAPグラウト工法(ウレタン樹脂)は福井エポキシ工業、茶谷産業、ガイナARC工法(アクリル樹脂)が日光産業、KFCが担当。クラック低圧注入工の有機系注入材ビックス工法(エポキシ樹脂)は久富産業、ショーボンド建設、無機系注入材リフレフィルボンド(超微粒子ポリマーセメント系注入材)は久富産業、住友大阪セメントが担当。剥落防止工の炭素繊維接着工FFシステム(2方向炭素繊維シート)は前田工繊が担当し、専用の材料と施工器具を用いて実習した。
なお同協会は、ことし3月に発足。民間サイドから橋梁やトンネルなど補修・補強の技術力向上へ積極的な提案支援を試み、研修開始冒頭、筧会長が挨拶し「我々民間の知恵を全力で出し切り、施設の延命化に貢献したい」などと強調。県丹南土木事務所鯖江丹生土木部の久保俊章部長も「県道路メンテナンス会議とも情報交流し、連携を図ってほしい」と同協会の活躍に大きく期待した。最後に同会技術顧問で福井大学の磯雅人准教授が「古い施設の補修補強は新築時以上により幅広い知識が必要。ひび割れの進行性の有無や適切な材料選定など見極めが難しい。個々研さんに努め、福井から全国発信できる先進例に」などとエールを送り締めくくった。次回研修は橋梁補修を予定。