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建通新聞社(中部)
2015/08/25

【三重】南庁舎耐震改修調査結果を公表 伊賀市 

 伊賀市は、南庁舎の耐震改修の可能性について、南庁舎耐震改修検討委員会の報告書に沿った調査結果を公表した。8月18日に開かれた市議会全員協議会で市側が説明した。調査は、検証業務を行うために設置した第三者委員会(事務局・三重県建設技術センター)に委託し、目視調査、コア抜き調査などを行い、建物としての強度を検証した。報告書では、コンクリートかぶり厚さの不足箇所の存在や、項目によって詳細な調査の必要性を求める内容があったものの、「コンクリートの強度について、当初の設計強度が得られている」とし、全般的には「耐震改修によって利活用は可能」という委員会の評価により、利活用の根拠付けを得たものと判断した。これにより、「伊賀市のにぎわい創出」の拠点として南庁舎を利活用する検討作業への着手が見込まれる。
 南庁舎は、鉄筋コンクリート造3階建て(中2階構造の3層式)延べ5927平方b。建築家・坂倉準三による設計で、1964年12月に建設された。所在地は上野丸之内。市は庁舎移転新築の決定とともに、南庁舎を保存・利活用する方針を示していたが、市議会から耐震性を疑問視する指摘があり、補正予算で調査費を計上し耐震性を検証する調査を行っていた。
 今回の検証は、第1の調査として、2005年度に実施した耐震診断について、現在の技術レベルの視点で部材などの強度を見直し、比較検討した。その結果、耐震性に課題があった2階部のIs値は、X方向が「0・32」から「0・44」に、Y方向が「0・28」から「0・56」にそれぞれ増加した。増加した理由として、「ゾーニングの見直し、長柱の強度を加えた」ことを挙げた。
 第2の調査として、今回、建物強度などの検証を実施した。調査結果を見ると、雨漏り状況について、屋上防水の欠陥や漏水経路を分析したが、正確な原因の特定には非破壊検査などが必要とした。コア供試体は新たに4カ所と前回の結果を対象に行い、「圧縮強度は問題ない」と判断。中性化深さ試験では、前回調査箇所から2カ所を選定して試験を行った結果、「ほとんどは中性化が進んでいない」などとした。
 柱・梁(はり)の鉄筋周囲のコンクリートかぶりの厚さの調査では、9カ所について、斫(はつ)り調査または、電磁波レーダで推定を行い、7カ所が基準以下となっており、コンクリート自体には問題がないものの「構造物の耐久性、耐火性に関する大きな問題」と指摘し、継続使用の場合は「全数調査が不可欠」とした。
 その他の留意点として、基礎梁も断面を欠損させて配管を通した箇所、内・外部の打ち放しコンクリートで剝離箇所があったことから、厳密な調査、速やかな対策の必要性を挙げた。
 調査結果を踏まえた各部位の改修工法の提案として、対象となる部位15カ所について、現仕様、劣化状況、必要な補修概要を一覧で示した。
 構造体への耐震工法については、3種類の工法を示した。「パターンA」では、増設壁6カ所、ブレース4カ所、柱鋼板巻き補強4カ所。補強性能は上位、コストは中間ランク。「パターンB」では、増設壁10カ所、ブレース2カ所、柱鋼板巻き補強4カ所。補強性能は中間、コストは最小ランク。「パターンC」では、増設壁10カ所、SMIC工法(開放型耐震補強工法)4カ所、柱鋼板巻き補強4カ所。補強性能は下位、コストは最大ランクとした。
 市では、南庁舎の利活用方法として、図書ゾーンや民俗資料展示、郷土作家作品資料の展示などの案を示していた。今回、耐震改修を前提とした利活用が可能との判断を受けて、庁舎周辺のまちづくりを検討する中で、利活用の用途を選定していく。また、利活用方法が選定された段階で、必要となる耐震改修方法を検討する。

提供:建通新聞社