金沢市は、旧市街地に唯一残る石置き板葺き屋根の町家「森紙店」(野町1丁目2番34号)について、建物所有者から寄附を受け、現地で保存する方針を固めた。
森紙店は江戸時代末期の建築と推定され、塩乾物の商家を明治中期に森家が購入し、紙販売を営んでいた。主屋の規模はW造2階建て延べ259・59平方メートル。桁行4間、梁間7間半、切妻造・平入、石置き板葺き屋根、1階庇は瓦葺き。表構えはセガイ造で1階のガラス戸、2階窓の一部を除き旧態を留める。平面はトオリニワに面して表からミセ、チャノマ、ザシキを配する典型的な町家の構成。また、内部の仕上げは柱、梁、天井、建具など全て弁柄(べんがら)で塗られている。
1983(昭和58)年4月11日付で、森紙店(主屋、土蔵)は市指定保存建造物の第1号に指定された。
市によると、主屋部分の一部が国道157号野町自転車歩行者道整備事業に伴う拡幅対象区域に含まれ、建物所有者の森啓吾さんは解体撤去を検討。貴重な建築物であるため、保存に向けて両者で協議を進めた結果、これまでに主屋の寄附を受けることが決まった。寄附後、市側は年度内に曳き家工法で現在地から約4メートル後方に移す。
なお、活用方法について、市文化財保護課は「立地場所は寺町台重要伝統的建造物群保存地区や、にし茶屋街に近い好立地であり、来年度以降に検討したい」と話す。