熊本県は、石綿障害予防規則(以下、石綿則)の規制強化に伴い、学校施設を除く県有施設約940カ所の状況調査・除去の検討に乗り出した。年度内にも取り組みへの準備を進め、平成28年度以降から対策に着手する。全国的にも先駆的な動きで、各自治体のモデル事例となるよう活動を加速する構えだ。
国土交通省の調査によると、煙突内の石綿含有断熱材が著しく劣化している場合、隣接する機械室でも比較的低い濃度の石綿繊維の飛散が確認されている。これを契機に昨年、厚生労働省が労働者視点に立った石綿則を、環境省が周辺住民視点に立った大気汚染防止法をそれぞれ改正。解体費用の負担や調査の届出を発注者に義務づけするなどの措置を講じている。
石綿則は、ばく露防止対策をそれまで『吹付石綿等』(いわゆるレベル1※)を対象としていたのに対し『保温材・耐火被覆材等』(レベル2)まで拡大しているのがポイント。発じん性がレベル1程はないものの▽ボイラー・配管・空調ダクト保温材▽建築物の柱・梁・壁等耐火被覆材▽屋根用折版・煙突用断熱材―に使用例があり、石綿則により対策が必要とされた。
このため県では、レベル2の使用が懸念される県有施設について対策が必要と判断。学校施設については、既に全国規模で調査が行われており、残る約940カ所・約3000棟を対象として現況を調査する。来年度以降、本格化させる見通しで、緊急性の高い施設については除去することも視野に入れている。
ただ、調査には専門的な知識を持った人材が必要。「厚生労働省が認めるアスベスト診断士などを予定しているが、県内には十数人しかいない」(環境保全課)のが実情だ。また「きちんとした調査報告書が作れるのは一部の技術者」(日本アスベスト調査診断協会)とも聞く。
環境保全課では、県内の石綿対策の専門家集団である熊本県石綿撲滅対策研究会の意見を求め、今後、調査の進め方を具体化していくという。「我々の取り組みが市町村や民間に波及し石綿対策の一助になればと願っている」と話している。
【レベル区分】建設業労働災害防止協会による石綿含有建材別作業のカテゴリー。石綿が含有する▽1吹付材▽2保温材・耐火被覆材・断熱材▽3その他建材(成形板等)―に分類。発じん性では1から順に著しく高い〜高い〜比較的低いに区分されている。
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西日本建設新聞社