地方独立行政法人市立秋田総合病院の改築で第3回建設検討委員会が開かれ、建設候補地の選定に向けた新病院の概略規模や、適地洗い出しなどについての考え方が確認された。建設が可能な敷地の例として現在地も含め秋田市内の4カ所が示されたが、今後は秋田市からも情報を収集して建設が可能な敷地を追加し、候補地を絞り込みたい考え。候補地は11月をめどに選定される見通しで、それまでの間、市が秋田市議会などへ中間報告する可能性もある。
新病院の建設では来年度以降、基本構想の策定業務が委託される予定となっているため、詳細な建設規模は構想の中で病棟、外来、薬剤、物品管理など各部門計画の積み上げにより検討される。今年度は建設候補地の選定や、そのフレームとなる概略規模について、入院患者の見通しなどを参考にしながら検討する。
必要な病床規模は、人口推計をベースに算出した入院患者推計や病床利用率などを踏まえ、385から430床、1床あたり70から80uと幅を持たせて検討する。入院患者推計によると、今年度の約13万人は10年後の時点で約5%増、25年後は今年度とほぼ同等、40年後には17%減となる予測。
現在の病床利用率は一般病床で約80%、全体で約76%にとどまっているが、新病院では多床室の解消も見込まれることから、利用率約90%を中心としたその前後5ポイントの範囲で、利用率85%の必要病床数を最大、同95%を最小病床数と仮定して計算した。
また、現病院における1床あたりの面積は62.7uだが、最近の病院建設では400から500床規模の病院で1床あたり約80uが目安とされている。一方で、独立行政法人福祉医療機構(WAM)がこれまで病院建設の融資額を算定するのに用いていた標準建築面積では、大学病院や臨床研修指定病院などで1床あたり70uとなっている。
これらを踏まえ、病床規模385床から430床、1床あたり70から80uと幅を持たせて建設規模を単純計算すると、最小385床で約27,000u、最大430床で34,400uの床面積となる。最大と最小の平均となる約30,000uをベースに、駐車スペースなども念頭に置きながら建設適地を検討する。
現在地で建て替える場合(新病院建設後に既存を撤去する場合)、用地取得が不要で診療圏も変わらず、患者移転の移動距離が短いなどのメリットがあるが、移転改築に比べて建物設計の自由度が低くなるほか、建設単価の増加や工事中における病院運営・患者サービスへの影響、駐車場の不足なども懸念される。
移転改築の場合は既存の病院を運営しながら新病院を建設できるほか、建物設計の自由度が高く工事もしやすいなどのメリットがある。一方で、新たな用地取得が必要で診療圏も変わり、移転時の入院患者の移動距離も長くなるほか、病児・院内保育施設の運営面で小児科医の巡回や食事の提供などへの支障も予測される。候補地を検討する場合は災害や交通の便、門前薬局など周辺施設の状況にも留意する必要がある。
第3回検討委では建設が可能な敷地の例として現在地を含む4カ所が示されたが、候補地については今後、秋田市からも情報を集め、追加したい考え。8月の第4回検討委までには、これまでの委員会で確認・検討された現病院の概要や建て替えの必要性、環境の変化や将来患者数の予測、将来構想、新病院の概略規模や適地の洗い出しなどについて原案が作成される。
8月・9月に原案を検討した後は、10月中までに素案を作成する。10月・11月は素案について検討し、建て替えの適地を選定。12月からは事業規模(金額)や事業手法、建設スケジュールを検討し、来年1月の第9回委員会までに成案(病院案)を作成する。1月・2月は成案について検討し、年度内に検討結果の資料を作成する予定。
同病院は昭和59年に竣工。すでに建設後30年を経過しており、耐用年数(税法上の減価償却年数39年)からみても建て替えの検討が必要な時期となっている。
現病院は総延床面積28,707.2u(診療棟:B1〜3F11,034.5u、病棟:B1〜8F17,567.94u)で、一般病床376床(個室31床、2床室62室、3床室7室、4床室5室、6床室30室、ICU6床)、結核病床22床、精神病床60床の計458床。
提供:秋田建設工業新聞社