――危険見つけてみんなで改善 意識高めて安全職場――をスローガンとする「第88回全国安全週間」が1日、全国各地で一斉に始まった。建設業労働災害防止協会が創立50周年を迎えた昨年は、県内の建設業において3年連続で死亡災害件数が増加し、24人の尊い命が失われた。この現実に対して、とりわけ危機感を抱いた建災防千葉県支部(尾頭博行支部長)では、徹底した安全管理への取り組みを強化。それらの成果も後押ししてか、例年多発していた「年初・年度末」を最少件数で経過できたことで、6月末現在での死亡災害件数は「1件」にとどまっている。昨年から一転し、本年は「年間最少記録」に加え、念願だった「年間一桁」の実現性が極めて高い年として耳目を集める。全国安全週間を弾みに、県内建設業界が一丸となってゴールめがけて驀進する。
業界一丸で緊張感を持続 第88回目の「全国安全週間」を迎えて建設業労働災害防止協会千葉県支部の尾頭支部長は、支部としての労働災害の「現状認識」と「今後の取り組み」について言及した。
千葉県内建設業で発生した労働災害による死亡者数は、2011年に11人と過去最少を記録した後、3年連続の増加となり、特に昨年は24人を数えたことについて「一昨年に比べ7人増となる大変残念な結果」と断じた。
第12次労働災害防止計画による建設業における死亡災害の減少目標は2割以上(県内の目標値は11人)とされており、「現状は極めて厳しい状況」にある。さらに、震災の復興工事の本格化や東京五輪の開催による工事量の増加並びに資材・人員の不足など災害の発生要因が増す中で、死亡災害等重篤な労働災害の増加を懸念。「我々としては従来にも増して、緊張感を持った労働災害防止への取り組みが求められている」と訴えた。
4点の傾向踏まえ安全対策の充実を 千葉県内建設業における死亡災害を分析すると「何点かの特徴ある傾向」が認められ、第1点として「死亡災害に占める非会員事業場の割合が依然として高率」なことを指摘。
一昨年の17人のうち14人、昨年24人のうち15人が、元請・下請を含めた非会員事業場で占められていることについては「非会員事業場の安全衛生水準が一概に低いと断定はできない」と前置きしたうえで、今後、県内建設業での重篤な労働災害防止を推進するには「非会員事業場の解消が急務」との考えを示した。
第2点としては「改修工事・更新工事・解体工事において災害発生が多発している」ことを指摘。2013年は17人のうち11人が、昨年は24人のうち7人が改修等工事において被災。そのことから、適切な対応が求められるとともに「改修等工事は施工に係る制約が多く、技術的にも難易度が高いものが多いことから、施工計画作成時におけるリスクアセスメントの充実を図る必要がある」と強調した。
第3点としては「墜落・転落災害の多発」を指摘。墜落・転落により、一昨年は17人のうち13人が、昨年は24人のうち9人の死亡災害が発生。第4点として、一昨年は1人だった死亡者数が昨年6人と大幅に増加した「交通事故による死亡災害の急増」を挙げた。
「安全対策は現場によって千差万別」としたうえで、ほぼ共通していることに「現場との往復での自動車の使用」を挙げ、特に現場からの帰りには「通常の作業を行った作業員が、自らハンドルを握るケースは日常的」と指摘。運転を担当する作業員には「帰路の安全運転を確保するため、余分に休憩を取るなど十分な配慮が求められる」と強調し「これら4点の傾向を踏まえ、安全対策の充実を図る必要がある」と訴えた。
極めて高い実現性 1年の半分が終わって安全週間を迎えた6月末現在、県内建設業における死亡災害は、ここ数年の傾向に反して「1件のみ」とされている。例年多発していた「年初・年度末を最少件数で経過できた」ことで、年間最少記録と念願だった年間一桁も「実現性が極めて高くなった」と言明。
「危険見つけてみんなで改善 意識高めて安全職場」の安全スローガンに対しては、全国安全週間中に労働災害防止計画に示された実施事項とともに「県内建設業における死亡災害の特徴を再確認して頂き、それぞれの立場で責任を持って取り組むことにより、実りある安全週間にしたい」との決意をにじませた。