相次ぐ「側溝用鋼製グレーチング蓋」の盗難に頭を抱える市原市は、その対策として、人力では持ち上げづらい「グレーチング付きコンクリート蓋」への交換を進めている。同市道路維持課からの検討依頼を受け、市内に本社を構える平野コンクリート工業梶i平野哲也社長)と利根コンクリート販売梶i大口喜實社長)の3者が官民共同で開発。「網目があり、排水性が良く、盗難しづらい重さ」などの条件を踏まえて「エコセメント」仕様による長さ約1m、重さ94sの蓋を完成させた。さらにこのほど、排水性を2倍とする改良を加えた第2弾製品の試作品が完成。市職員の立ち会いのもとで6月に強度試験(曲げ試験)を行い、合格の判定が出れば、パワーアップした「盗難防止対策を講じたグレーチング付きコンクリート蓋」として、さらに脚光を浴びそうだ。
埋め込み式コンクリート蓋 市原市道路維持課によると、市内におけるこれまでの側溝用鋼製グレーチング蓋の盗難被害は、2013年2月15日から18日にかけて起きた、ちはら台西1丁目地先での14枚(被害額約10万円)に端を発し、本年3月30日の犬成地先での47枚(同約55万円)、4月5日の犬成地先での18枚と喜多地先での8枚(同約30万円)の3か所4件で、被害総数は87枚、被害総額は約100万円に及ぶ。道路を横断する側溝のグレーチング蓋がほとんどで、歩行者をはじめ自転車、バイク、自動車等の通行に危険を及ぼしている。
盗難対策で「先手」 これらの事態を重く受け止めた同課では、今回の被害に遭った個所のグレーチング蓋を「網目付きのコンクリート蓋」に変更。今後は後手一方ではなく、盗難対策としての先手を打ち、「盗難されやすい」と思われる「人通りが少ない山間部」などから順次、予算の範囲内でコンクリート蓋に変更。さらに、千葉市などで講じている既設の蓋にグレーチングを固定する「特殊金具」を設置し、蓋交換とのダブルで盗難防止を図る方針。ちなみに、同市の本年度当初予算における道路資材等購入予算額は、約1400万円を計上している。
「バリアフリー対策」が職員の目に 平野コンクリート工業鰍フ平野哲也社長によると、グレーチング付きコンクリート蓋は当初、市原市の南総福祉センターの「バリアフリー対策」を兼ねて同社が施工(更新)した側溝用の蓋だった。当時は、市内で側溝用鋼製グレーチング蓋の盗難被害が立て続けに発生した頃で、グレーチング付きコンクリート蓋が、その盗難対策に追われていた道路維持課の職員の目に留まったことがきっかけだという。
その後に改良を加えて同社らが開発したグレーチング付きコンクリート蓋は、中央部に30p×5・5pの鋼製グレーチングを埋め込んだもので、「埼玉県型」と言われるグレーチングを利用した。現況タイプのグレーチング付きコンクリート蓋のコストは、型枠とグレーチング分を合わせて1枚あたり6700円。グレーチング2枚を横に並べ、排水性を2倍にして試作した新型では、さらにグレーチング1枚分と溶接コストが上乗せされるが、「数が出ればコストは抑えられる」(平野社長)ほか、コスト的にはグレーチング蓋よりも割安になるという。
「市原市スタンダード」に期待 平野社長は、開発したグレーチング付きコンクリート蓋について「これにより盗難対策などの問題がクリアされ『市原市のスタンダード』になれば」と、今後の展開に期待を寄せる。
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市原市道路維持課では、これまでに「A型嵩上げ側溝蓋」を企画・立案して開発。「道路側溝の段差解消による安全確保と経費縮減」などの観点から、同市の2013年度職員提案制度表彰式において「最優秀賞」を受賞した実績がある。道路側溝の設置形態が多岐にわたる中で、従来は既設側溝をすべて撤去し、蓋付きの側溝を新設していた分、撤去及び処分費がかさんでいた。既設側溝を撤去することなく、その上に新たに開発した側溝蓋を載せることで段差解消を施した結果、「有効幅員の拡幅」「経費縮減」「騒音や振動の軽減」などが図られたもの。審査では「視点も新しく、先駆け的な取り組みであることに加え、経費面からも大変効果が高い」ことが評価されたという。