県県土整備部港湾課は港湾施設の長寿命化計画を策定し、16日、内容を公表した。計画期間は2014〜63年度の50年間。長寿命化の対象施設は防波堤など港湾施設265施設。これらの施設について、事後保全的な維持管理から予防保全的な維持管理へ転換することにより、各年の維持管理費の平準化を図るとともに、今後50年間の事業費を1500億円から約270億円に約8割削減する。対策工法では、主に電気防食工の採用による延命化を図る。
本県の港湾施設は1970年代から80年代の高度成長期を中心に大量に整備された施設が多く、今後、順次更新時期を迎え、2020年から40年にかけて大量の施設更新を迎える。
このため県では、将来的な維持管理費の縮減を目的として、08〜12年度に施設ごとの維持管理計画書を作成し、13年度に維持補修費の平準化の検討を行い、港湾施設の長寿命化計画を策定した。
港湾施設には、@航路、泊地など水域施設A防波堤、護岸など外郭施設B岸壁、桟橋、物揚場など係留施設C道路、橋梁など臨港交通施設Dクレーン、荷さばき地、上屋など荷さばき施設E倉庫、野積場など保管施設がある。
計画の対象施設は、このうち、国がコスト面から予防保全的な対策が有効として維持管理計画書作成の補助対象とした施設で、県で管理する港湾構造物のうち、長寿命化を図る対象として位置付けた係留施設のうち岸壁・物揚場、外郭施設のうち防波堤、臨港交通施設のうち橋梁の合計265施設とした。
同計画の策定に当たっては、シミュレーションによる事業費予測を実施。老朽化施設に対して、予防的な維持管理を実施せず、改築を含めた事後的な対策を講じた場合の事業費は、今後50年間で1500億円となる見通し。これに対し、予防保全型による事業費は約270億円となり、約8割の事業費削減効果が得られた。計画的な点検診断により劣化状況を把握し、適切な時期に予防対策を講じることで、50年間の施設維持が可能となる。
港湾施設は、施設が古く腐食が進んでいる施設が多い。このため予防対策では、港湾構造物の特性を考慮し、延命効果が有効で、その他の構造物に比較して高い効果が得られる電気防食工により延命化を図る方針。その他の工法では、断面修復工、表面被覆工、鋼矢板穴あき補修、エプロンの打替などを予定する。
事業費予測では、部材と対策工を関連づけた。下部工鋼部材は、A・Pマイナス1・00以深にあっては、予防保全として有効な電気防食工、電気防食工の効果が得られない飛沫帯にはRC巻立を代表工法として選定。コンクリート部材は表面の劣化部分を対象とした断面修復を実施し、エプロン、係船柱、防舷材といった部材は損傷が確認されるたび、個別に打替、取替を行うことにより対応する。
ただ、事業費予測は既往点検結果に基づき、部材ごとに標準的な対策工法・補修数量を設定して検討したもので、実際の修繕には点検結果を踏まえたうえ有効な対策を実施する必要があることを留意点として挙げた。
県内の港湾施設のうち、建設後50年以上を経過している施設の割合は8%だが、10年後には30%、20年後には61%となり、今後、急激に老朽化の割合が増加することが見込まれている。