建設業労働災害防止協会の主唱による「2014年度建設業年度末労働災害防止強調月間」が、1日から全国各地で始まった。様々な工事が輻輳し、完工時期を迎える工事も多いことから、労働災害の多発が危惧される年度末。この時期の建設現場の安全衛生管理を徹底するため、経営トップをはじめ現場の管理監督者らが一層の安全衛生水準の向上を目指し、店社と作業所との緊密な連携のもとで一体となり、労働災害防止活動を強化するもの。「年度末が1年を制す」。年別にみると「年初の時期」にあたる年度末は、統計的にその年の労働災害の傾向を占ううえで、大きなポイントを占めると言われる。同強調月間を迎えて建災防千葉県支部の尾頭博行支部長は、支部としての「現状認識と対応」について語った。
支部の現場認識と対応 昨年の県内建設業における死亡災害は25件で、一昨年に比べて8件の大幅増加となった。「過去最少」を記録した2011年以降、3年連続の増加となり、06年の27件以来の「悪い数字」(建災防)。千葉県支部ではこの間、重篤な死亡災害の減少に傾注してきたが、死亡災害件数としては、ほぼ10年前の水準に戻った。
労働災害が多発傾向にある年度末を迎え「関係者一同、緊張感を持つ必要がある」と自戒した尾頭支部長は、年度末労災防止強調月間に際して、@最近の死亡災害の特徴A県内建設現場の一斉監督B当面の課題――について言及した。
□最近の死亡災害の特徴 2013年は17件の死亡災害のうち、13件(77%)が墜落・転落災害という「大きな特徴」があった。千葉県内ではこのところ、いわゆる「三大災害」のうち、墜落・転落災害以外の建設機械による災害と崩壊・倒壊災害がほとんど発生しておらず、この面での労働災害防止対策が「一定の効果を上げた」かに見えた。
改めて三大災害と交通事故対策 ところが、昨年の墜落・転落災害は9件(36%)と若干減少したものの、一昨年はゼロだった「建設機械」に起因するものが5件発生。このうち4件は、建災防の会員によるものだった。さらに「交通事故災害」が一昨年の1件から昨年は6件と大幅に増加したなど、改めて「三大災害と交通事故対策の必要性」が痛感される。
□県内建設現場の一斉監督 千葉労働局の発表によると、昨年12月1日から19日の間に県内99現場に対して行った各労働基準監督署による一斉監督の結果、55・6%に労働安全衛生法違反が認められたという。
このうち、重篤な災害につながる足場や高所の作業床からの墜落・転落防止に関する法令違反が33現場(33・3%)で認められた。協力会社の労働者とともに現場で業務を行っていく中で、元請事業者は種々法規制の対象となっているが、この分野での安全衛生管理措置に関する違反も35現場(35・4%)に上り、それぞれ是正指導が行われた。
現場内での法令違反の根絶 「法令違反が全くない状態でも数多くの労働災害が発生している」ことを考えても「現場内での法令違反の根絶が労働災害防止のため不可欠」であることを再認識すべきである。
元々昨年の県内全産業の死亡災害は52件で、このうちの48%を占める建設業が全業種の中で最も高い数値。このことから、建設業が「労働災害防止対策の最重点業種」とされ、今回の一斉監督になったと言われる。「災害が多発している業界」との世評に加え、「法令違反を常態としている」との疑念を抱かれることのないよう、法令順守に向けた取り組みを徹底しなければならない。
□当面の課題 前述の通り、労働災害防止のための最重点は「墜落・転落災害対策を中心とした三大災害対策と交通事故対策」だが、これに加えて本年は、厚生労働省と建災防などの災防団体を主唱者とする『STOP!転倒災害プロジェクト』が開始された。
この運動は、全産業における死傷災害のうちの2割以上を占める「転倒災害」に着目し、職場における転倒リスクの総点検と必要な対策を講じることにより、職場の安全意識を高め、安心して働ける職場環境を実現することを目的としているという。
積雪や凍結でのリスク低減対策 高年齢労働者による転倒災害は、その災害の程度が重くなる傾向があり、「高齢化に直面している建設業界」としては、真剣に取り組むべき課題である。特に「積雪や凍結によるリスクの低減対策」など、年度末に向けて早急に手を付ける必要がある。
この年度末を無事故・無災害で乗り切ることにより、過去3か年の「労働災害増加傾向を断ち切るきっかけ」にしたいと思う。千葉労働局をはじめ行政当局の引き続きのご指導とご鞭撻を賜りたい。