日本工業経済新聞社(茨城)
2015/01/31
【茨城】聞屋の目線 利益そぐ変更協議へ打開策、会話から見直しを
地元建設業者が抱える悩みは、なにも資材高騰や技術者不足による問題ばかりではない。根強く残る問題の一つに、発注者との変更協議が挙げられる。
昨年7月末、水戸市内で開かれた講習会。その会場で、よく知る建設会社の社長と久しぶりに話をした。「最近どうですか。儲かってますか」と、冗談交じりで声をかけた。すると「公共工事をやめようと思うんだ」との返答に驚いた。
以前から、公共と民間の仕事を半々ぐらいの割合で行っていた企業だ。聞けば発注者との変更協議に嫌気がさしていると話す。赤字続きの中、民間工事にウエートを置こうかと考えているという。
実際に着工した後で生じた追加分の工事について、設計単価に基づいた金額を負担してもらえるよう、官民対等な立場で話し合うわけだが、実際はそうではないようだ。
官側は、よく「受発注者は甲乙の対等な立場だ」と言う。しかし到底同じとは言い難いのが現状。
変更協議で主張すること自体が間違いで「発注者に食ってかかっては次の工事に影響する」と懸念を抱く社長。以前なら、そんな「お付き合い受注」もできたろうが、いまはそんな時代じゃないはずだ。それでも、その場所でこれからも仕事をしていく者にとって、気兼ねせざるを得ないのか―。
昨年9月、県建設業協会では発注者との変更協議をいかに有利に進めるかを解説する講習会を開催した。建設現場で発注者との変更協議に苦しむ技術者らを対象に、折衝を有利に進め利益確保に導くためのノウハウを解説したものだ。
経営コンサルティングの講師は、変更協議を有利に導くための折衝のポイントとして、▼発注者とのコミュニケーション力向上▼業務フローチャートの明確化▼建設業法や公共工事標準請負契約約款への理解▼折衝に必要な要素とテクニック―を挙げた。
「何をいまさら」と思う人もいるかもしれない。しかし、コンサルティングの人から言わせれば、「会話の一つから見直さなければ、良い印象は持たれず、変更にはつながらない」と、根本的な所から改善する必要性を説く。その上で、業務フローチャートを見直してほしい。
そして、弱い部分と指摘するのが「法律」。建設業法や公共工事標準請負契約約款を知ることで、行政職員の考えが理解できる。行政職員は法制度のもとに職務を全うしている。その根幹を知り、理論武装することで対抗できるという考えだ。
そうすれば、その折衝力をもって発注者はもとより、下請業者との交渉力にも役立つはずだ。
厳しい言い方かもしれないが、こういった取組をさせていないのは経営者の責任ということになる。まずはトップが考え方を変えて、社員へ下ろしていかなければならない。
変更されなかった理由を、いつまでも「発注者のせい」にしていては前には進めない。自助努力をもっての前進を、ただただ願うばかりである。