日本工業経済新聞社(群馬)
2014/12/03
【群馬】矢崎剛吉所長にインタビュー
10月1日付で、国土交通省八ッ場ダム工事事務所の所長に就任した矢崎剛吉氏。ダム着工を間近に控えているが「ダム本体の完成が事業の完成ではない。地域の皆さまが平穏無事な生活を取り戻し、以前よりも地域の活性化がなされて、初めてダム事業が成功したと言える」とこれからのさらなる事業推進に意気込みを見せた。
−着工を控えて率直な気持ちは
矢崎 昭和27年度より予備調査に着手して以来、大変長い期間にわたり、地域の皆さま方にはご苦労をおかけしているが、このたび本体建設工事を契約することができ、本格的な工事の開始に先立ち、現在は各種の準備を進めている段階に来た。今後、工事が順調に進み、ダム本体が完成してダム湖ができることとなるが、これをもってダム事業の完成ではない。ダム事業、水特・基金事業による生活再建対策や地域振興対策と、ダム湖の利活用により、地域の皆さま方が平穏無事な生活を取り戻し、以前よりも地域の活性化がなされて、はじめてダム事業が成功したと言うことができる。今後とも、1日も早い生活再建とダム事業の完成を目指していく。
−ダム関連事業の進捗状況について
矢崎 上信自動車道の八ッ場バイパスとしての役割も担う国道145号の付替区間が全線供用開始したことで、安全性やアクセス性の向上により、地域経済に与える効果は大きいものと期待している。また、各地区における代替地の整備・分譲、県道林岩下線、県道林長野原線、県道川原畑大戸線付替区間の大半の供用開始、JR吾妻線付替区間の運用開始など、生活再建に関する多くの事業が着実に進捗している。特に、地域振興対策として基金事業により整備された道の駅八ッ場ふるさと館では、昨年4月27日のオープン以降、多くの方々にお立ち寄りいただき、大変な賑わいを見せている。これから整備される地域振興施設においても、活力ある地域づくりや地域連携の核として活躍されることを願っている。
−完成したダムはどのような役割を担うのか
矢崎 八ッ場ダムは、首都圏を支える利根川水系において、洪水の氾濫から流域の人命・財産を守るとともに、必要な都市用水を供給するために吾妻川中流の長野原町に建設を進めている多目的ダムだが、これら治水と利水の機能以外にも地域振興の一翼を担い、地域にさらなる発展をもたらすことを期待している。
−本体工事が始まるにあたりメッセージを
矢崎 まず、本体施工者である清水・鉄建・IHI異工種建設工事共同企業体には、最新の技術力をもって施工にあたっていただくことになるが、安全管理の徹底はもちろんのこと、適切な工程管理と高品質な施工により、早期の本体完成を目指してほしい。また、移転代替地への環境配慮や大規模工事現場としてのPRなどもお願いしたい。また、本体工事以外にも代替地整備などの工事が多く残っており、ダム本体だけでなく、このダム水源地域全体の発展に向けて建設業の皆さまの力を貸していただきたい。