建通新聞社四国
2014/12/02
【徳島】久米設計で 藍住町の文化ホール複合施設
藍住町は、指名によるプロポーザル方式で選定作業を進めていた(仮称)「藍住町文化ホール・公共施設複合化事業」の設計者を久米設計大阪支社(大阪市西区)に決め、基本・実施設計・地質調査業務を開始した。多様な演目に対応した格調高い多機能ホールや施設内に交流・連携を図る多目的空間(モール)を設けるなど、合理的でコンパクトな平面計画が特徴。災害時の一時避難所機能を有するなど多様なニーズに対応した施設を目指していく。2015年11月末の設計完了が見込まれている。
プロポーザル競技は指名2者で行われ、プレゼン後選定委員6人(持ち点が1人当たり250点)の採点の合計点が1328点(次点1198点)と、最も高かった久米設計の提案が採用された。久米設計案は、複合施設としての性質を踏まえ、各種事業の連携が図りやすいよう配慮されており、限られたスペースを効果的に活用できるよう、エントランスの積極的な利用を想定しているほか、広場の整備を含めた全体計画についても周辺施設との関連性と調和を考慮し、子育て世代をはじめとする世代間交流のみならず、地場産業の活性化を視野に入れた提案がなされている−として評価された。
同社の提案によると、「世代を超えて夢きらめく」地域交流拠点の創造をコンセプトに、文化芸術を享受できる健康的な生活の場として整備するほか、計画地中央に広場(あいずみ広場)を配置し、周辺施設とを回遊路でつなぎ、施設間の連携を高め、ウォーキングなどの健康活動も促進させる。
新施設は2階建てとし、高さの必要な文化ホールは南に寄せ、北側の保育所への圧迫感や日陰の影響の軽減を図る。藍の館や周辺施設に多くみられる勾配屋根を採用し、軒の水平線による、のびやかで落ち着いた佇まいとし、全ての世代に親しまれる外観デザインを目指す。
また、施設にはメーンの文化ホールのほか、あいずみ広場と正法寺川公園を結び通り抜けが可能な多目的空間「あいずみモール」を設ける。このモールを中心にホール諸室を南側に、事務・活動諸室を北側に配置。第2のホールとして多目的ホールも設ける。このほか調理室・キッズルームや検診室、社会福祉協議会・保健センター包括支援センター事務室なども施設外周に配置する。ホールの公演、集団検診の際にはモールを適宜区画し、ホワイエ、検診待合も利用可能にする。
文化ホールは多様な演目に対応した格調高い多機能ホールを目指し、モミ上げ式バルコニー席を設けた扇形平面形式やプロセニアム型舞台、可動型舞台・客席などの採用を提案。安全性・作業性の良い電動巻き上げ式の舞台装置やLED器具を採用した舞台照明設備なども見込む。日常的なメンテナンスや長期的な修繕にも対応する計画。
施設全体としては、十分な耐震性や機能性(インフラ復旧までの設備機能の維持など)も確保し、屋根に太陽光発電パネル(30`h相当)の設置するなど、災害時の一時避難所として利用できる施設としても整備する。
施工に当たっては、鉄筋コンクリート構造をホールや楽屋部分に限定し、大屋根を鉄骨構造とすることで、工場製作を並行させ、現場の工期を短縮する方法や、人手不足・工期遅延対策として工業化製品の積極的採用など、合理的にコストと工期を削減する工夫を提案している。
同事業は、役場庁舎東側に位置する奥野字矢上前の町福祉センターなどの町有施設を解体し、跡地に650席のホールを含む複合施設(延べ6500平方b程度)を建設するもの。14年度から15年度にかけて設計を行い、15年度中の着工、16年度末の建物の完成を目指している。総事業費は既設解体費を除き約34億円。
今後はパブリックコメントも踏まえながら設計進め、15年11月末の設計完了と工事発注、そして着工、16年度末の建物完成を目指していく。外構を含めて18年度内の完成が見込まれている。