日本工業経済新聞社(群馬)
2014/11/11
【群馬】烏川圏域河川整備計画(変更)素案
県河川課は10日、高崎合同庁舎で開かれた第20回群馬県河川整備計画審査会に、「烏川圏域河川整備計画(変更)素案」を提示した。近年、増加傾向にあるゲリラ豪雨などにより水位が上昇し、改修を求める声が多い井野川をめぐっては、当初計画を大幅に変更。新たにL約1万4700m区間内に4カ所の調節池を整備し、水位上昇を抑制することとした。調節池を整備しても堤防越水が懸念される箇所については、河川改修も実施していく方針だ。井野川以外にも、烏川、天神川、染谷川で河川整備を実施していく。
計画対象期間は、一連の河川事業の完成によって効果が期待できる今後おおむね30年間。
今回の変更素案の肝となるのは、井野川の河川整備計画の変更だ。
同川は、流域内の市街化や短時間の集中豪雨の増加により、近年、沿川で内水による浸水被害が多発している。2012年の集中豪雨では、住宅地への浸水はなかったものの、堤防を越水する事態となり、各方面から改修を求める声があがっていた。このため、調節池を整備して洪水を一時的に貯留することで、河川水位の上昇を抑制する。近年の集中豪雨も考慮した、おおむね30年に1回程度発生すると予想される洪水に対しても、安全な流下を可能にさせる。
03年3月の当初計画では、常慶橋下流約1000m地点から新井野川橋下流までのL約1400mで、河道掘削や護岸工、築堤工を実施するとしていた。
これを大幅に変更し、施工場所を高崎市綿貫町の鎌倉橋付近から保渡田町の阿弥陀橋付近までのL約1万4700mのうち、流下断面が不足する区間へと広げる。
水位上昇対策として、区間内の井野川右岸側に3カ所(上流側から21万2000立方m級、11万6000立方m級、8万9000立方m級)、さらに井野川に合流する染谷川左岸側に1カ所(7万9000立方m級)の調節池を整備する。調節池を整備しても河川流下断面が不足する区間では、流下断面拡大を行うとともに、浸食対策として環境に配慮したブロック工、河床低下対策として根固め工などを実施する。
井野川では堤防の浸透対策も講じる。鎌倉橋下流右岸のL約1200mと、井野川橋上流左岸のL約200mを対象に、堤防の浸透破壊や法面すべり破壊対策工事を実施する。
烏川本川では、倉渕ダム計画の中止に伴い、河川整備計画を変更する。従前では4カ所、計L約1050mで築堤などを行うとしていたが、@JR信越本線から上流L約400m(右岸、下豊岡町)A長野堰から上流L約750m(左岸、本郷町)B長野堰から上流L約850m(右岸、町屋町)C長野堰上流約900mから上流約1700mまでのL約800m(右岸、町屋町・上大島町)D長野堰上流約1900mから上流約2300mまでのL約400m(右岸、上大島町)E森下橋上流約50mから上流約500mまでのL約450m(左岸、下室田町)−の6カ所、計L約3650mとし、箇所・延長共に増やし、築堤工と護岸工を実施する。計画区間下流が大臣管理区間となっているため、大臣管理区間と同等の整備水準で家屋への浸水被害防止を図る。
また、烏川でも堤防の浸透対策として、JR信越本線橋梁上流左岸のL約250m、環状大橋上流右岸のL約800m、中河原橋上流左岸のL約1250mで対策工事を行う。
天神川では、下小塙町の高崎市道O−232号線からD−403号線上流50mまでのL約500m区間で、河道掘削や護岸工を実施する。当該区間は河川の断面積が小さく、計画流量の5分の1程度の流下能力しかなく、宅地や農耕地に浸水被害が発生しているため、おおむね10年に1回程度の発生が予想される洪水を安全に流下させるよう、河道を拡幅する。改修にあたっては、地被植物や草類が生い茂るように工夫したブロックなどを使用し、みお筋も蛇行させて自然な水際になるようにしていく。
染谷川河川整備には、まだ着工していないため、当初計画を変更しない。新保田中町の田中下堰上流から新江橋下流までのL約250m区間で河道掘削や護岸工を進める。右岸側の現河道部の低水護岸は自然石や木杭などにより自然な水際になるよう工夫していく。天神川と同様、おおむね10年に1回程度の発生が予想される洪水に対応させる。
烏川圏域は、高崎市、榛東村、吉岡町、前橋市、玉村町の5市町村で構成するが、その大部分を高崎市が占めている。