北海道建設新聞社
2014/10/14
【北海道】道新幹線開業で年間136億円の経済効果−政投銀が初の試算
日本政策投資銀行は10日、2016年3月に予定される北海道新幹線新青森―新函館北斗間の開業で、年間約136億円の経済効果が道内全域にもたらされるとの調査結果を発表した。関東や東北など他地域との交流が活発化し、消費の増加や新たな雇用の創出が期待できると説明。東北新幹線沿線地域へのPR活動に重点的に取り組むことで、経済効果はさらに高まる可能性があるとした。
政投銀による道新幹線道南開業の経済効果試算は初めて。来春に予定している北陸新幹線長野―金沢間の開業に関しては13年3月に公表し、石川県で約124億円、富山県で約88億円の経済効果が生じるとみている。道内が両県を上回る理由について政投銀北海道支店では「北海道は食を中心に域内での自給率が高く、より大きな波及効果が及ぶことが考えられる」(企画調査課)とする。
調査では、青森県まで新幹線で訪れる人が多い関東の1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)と宮城県で、道南開業後に新幹線を使って来道する人が年間どれくらい増えるか推計。
その結果、観光とビジネスを合わせ、1都3県から約7万2000人、宮城県から約5万8000人が増加する見通しで、これらの人たちの宿泊や飲食、土産物購入などによる経済効果(直接効果)に72億6400万円が見込まれるとした。
また、宿泊や飲食、土産物購入といった需要への対応で道内産業の生産額が40億5300万円増えるほか、これに伴う雇用者所得の上昇や消費の拡大、新規の雇用などで22億8900万円の波及効果が考えられると試算。直接効果にこれら間接効果を合わせた経済効果は136億600万円に上るとした。
政投銀は、今回の試算以外にもさまざまな経済効果が生じることが予想されると説明。経済効果をさらに高めるためには、新幹線利用者を増やすための効率的なPR活動が必要とした。
具体的には、東北新幹線沿線地域を重点とする開業アピールを挙げた。国土交通省の調査によると、青森までは年間で1都3県から約100万人、宮城県から約37万人が訪れているが、道南まで足を延ばす割合は6.5%にとどまる。引き上げの余地は大きく、そのために新幹線は格好の材料となり得る。
PR活動を継続するための資金については、ファンド活用の手法が有効とした。行政機関が無利子でファンドに資金を提供し、その運用益を充てる仕組みで、実際に石川県がこのスキームを用いて活動資金を調達している。
道南開業まで1年半を切り、道内では車両の陸揚げや試験走行といったイベントが相次ぐ。政投銀は近く関係機関に調査結果を示し、開業に向けた機運をより高めるよう働き掛ける方針だ。