建通新聞社(神奈川)
2014/07/31
【神奈川】箱根町 温泉熱利用の再生可能エネルギーを推進 ヒートポンプ方式を推奨
箱根町は、「温泉熱」を再生可能エネルギーとして活用し、地産地消を図る方針を固めた。県も参加する「箱根温泉熱利用検討会」(亀山秀雄東京農工大学大学院教授)が「箱根温泉熱利用検討報告書」をまとめ、利用の可能性を確認した。3方式を検証した結果、『箱根町においては、ヒートポンプによる温泉排湯を利用した温泉熱の有効活用が最も適している』としている。今後、行政と事業者が連携するスキームを構築し、宿泊施設などへの普及促進を図っていく。
箱根町では、480本の源泉のうち304本の源泉から2万1835g/分の温泉を湧出(揚湯)している。しかし、温泉熱を利用している宿泊施設等は、7・9%(箱根温泉旅館協同組合員117社へのアンケート調査)と少数。温泉熱の利用先は、給湯利用が4件、暖房利用は2件、蓄熱槽を有する宿泊施設等は3件となっている。
その一方で、省エネ効果の高い高効率な設備に興味のある宿泊施設等は、全体の86・7%。高い関心があるものの、設備の老朽化、コスト面などで実現できていない状況が明らかになった。
そこで町は、温泉資源の保護を最優先に考えた上で、発電などのために温泉の採取量を増やすことなく、「浴用に利用する前後の温泉熱」を有効活用する方法を検討。
温泉熱の活用方法として、▽バイナリー発電=温泉のような加熱源より沸点の低い液体を加熱・蒸発させて、タービンを回し発電する方式▽熱電発電=2種類の熱電半導体で対をつくり、両接点に温度差をつけると熱起電力が生じる現象を利用して電力を取り出す方式▽ヒートポンプ=温度の低いところから温度の高いところへ熱を移動させる−3方式を比較・検証。
この結果、いずれの方法でも条件によって、初期投資額の回収が可能と見込まれるが、湧出(揚湯)量や湯温などの状況を考慮すると、『箱根町では、ヒートポンプによる温泉排湯を利用した温泉熱の有効活用が最も適している』と結論付けた。
宿泊施設等へのヒートポンプ等の普及促進スキームは、宿泊施設等からの希望により町が事業者(メーカー、リース会社)を仲介。事業者が現地調査・提案を行い、合意すれば宿泊施設等と契約。国の支援方策を導入しながら事業者が発電・売電を行う(リースの場合は宿泊施設等)。
国の支援は、事業費の3分の1以内を補助する、エネルギー使用合理化事業者支援事業など数種類を想定している。