日本工業経済新聞社(群馬)
2014/06/26
【群馬】本紙が群馬県電設協会へアンケートを実施
本紙・群馬建設新聞は、群馬県電設協会(阿久澤茂会長)の協力を得て正会員へアンケートを実施した。正会員へは今期の売上高の見通しや電設関連資材の価格動向、電工の設計労務単価、ダンピングによる影響、書類の簡素化などについて質問した。このうち、売上高の見通しは半数近くが上昇を見込み、電設関連資材は7割近くが上昇していると回答した。二度上昇した設計労務単価については、8割がいまだ低いとの見方だった。ダンピングについては7割以上が多少なりとも影響があるとし、最低制限価格などの引き上げを求めている。書類の簡素化については、過半数が『感じていない』と回答した。
本紙から建設関連団体へのアンケート調査は初の試みであり、また、同協会も県との意見交換会に際し、事前に要望などを取っていたが、阿久澤会長によると「知る限りにおいては、こういったアンケートは初めて」だという。
アンケートについては、同協会の正会員68社を対象に5月21日から同月31日までの間に実施。有効回答率100%となる全68社から回答を得た。
質問項目には◇前期と比べた今期の売上高の見通し◇前期と比べた今期の営業利益の見通し◇今期における資金繰りの見通し◇電設関連資材の全体的な価格動向◇今期の公共工事設計労務単価(電工)◇今期の実勢労務単価(電工)の見通し◇県発注工事のダンピングによる影響◇県公共工事における提出書類の簡素化◇技術者の平均年齢◇後継者の有無−を挙げたほか、電設関連資材の価格動向では上昇傾向にある資材を、ダンピングによる影響では、その対策に向けた有効な手段も聞いた。
前期と比べた今期の売上高の見通しを聞いたところ『上昇』が10%、『やや上昇』が35%と回答した。その理由について聞くと『太陽光発電などの再生可能エネルギー関連工事の影響』や『官民とも発注量の増加』『消費増税に伴う駆け込み受注』などが多かった。再生可能エネルギー関連には、照明のLED化なども含まれているとみられ、固定価格買取制度による太陽光発電設備の設置増とともに、省エネ関連での売上高確保が背景にあるようだ。
他方『やや下降』『下降』と回答した企業も20%おり『大型工事の減少』や『受注件数の減少』などの見方を示したほか『前期が良過ぎた』との回答もあった。
営業利益の見通しに関しては『上昇』と『やや上昇』が4割近くを占めたものの『横ばい』との見方が最も多かった。
資金繰りについて聞くと、6割以上が『心配ない』と回答するなど、経営の継続性を懸念する企業は比較的少ないとみられる。
電設関連資材の全体的な価格動向に関しては『上昇』と『やや上昇』が7割近くを占め、下降との見方は1社もいなかった。『上昇』と『やや上昇』と回答した企業へ具体的な資材を聞いてみたところ『ケーブル・電線類』が最も多く、次いで『盤類』『管路材・ダクト類』と続いている。
今期の公共工事設計労務単価(電工)について聞くと、8割が『低い』『やや低い』と回答した。協会は「工事量が増え、人手不足が顕著になっており、各社とも競争して人手を確保している状況。とりわけ、公共工事は余分に電工が必要になってくる。今後も工事が多く出てくれば、さらにそのギャップが生じてしまう」との懸念を示している。
その見方が示すとおり、各社へ今期の実勢労務単価(電工)の見通しを聞いたところ『かなり上昇する』と『上昇する』が6割を占めた。
県発注工事のダンピングによる影響では、7割以上がダンピングによって何らかの影響があると回答した。これらの企業へダンピング対策として有効な手段を聞いたところ『最低制限価格および調査基準価格の引き上げ』が最も多く、次いで『失格基準価格適用の徹底』『調査基準価格を下回った際の厳格な調査の実施』『工事成績など技術力を重視した入札参加要件の設定』『調査基準価格を大幅に下回った場合のペナルティ措置の創設』だった。
調査基準価格に関しては、その下限に失格基準価格が設けられない限り、入札時において失格にはならない。調査基準価格を下回る最低札を入れた企業には、しっかりとした施工体制が確保できるかどうかなどを発注者が調査し、その妥当性を判断する。しかし、多くの場合はそのまま落札者に決定、契約締結の流れとなっている。これまでも調査基準価格に関する意見・要望は多かったものの、その点が今回のアンケートで再度浮き彫りになった格好だ。
また、県公共工事における提出書類の簡素化状況について聞くと、半数が『簡素化されていない』と回答。『簡素化対象書類でも監督員に提出を求められる』や『データ提出以外にも紙ベースでの書類提出が多く、それが大きな負担』との見方が多かった。監督員による差を指摘する企業が多く、提出書類の簡素化対象であってもバックデータとして必要と求められるケースも多いという。協会も「この結果をみても、県側の判断基準が統一されていないのが分かった」とし、早期の改善を求めていく考えだ。
技術者の平均年齢では『40〜45歳』が最も多い34%を占め『35〜40歳』の31%が続いている。『34歳以下』との回答も若干あり、回答結果だけを踏まえると、若年層の技術者が確保されているようすで、協会も「われわれの業界で、これほど若い人が働いているとは意外だった」と話している。
後継者の有無では『決まっている』と『決まっていない』が半々だった。このうち『決まっていない』と回答した企業へ理由を聞くと『検討中』や『跡継ぎが若い』『後継者が複数存在する』『同族経営ではない』などの意見が出された。
これらのほか、県への意見・要望を聞いたところ『実勢価格に即した予定価格を設定してほしい』や『技術者の専任制を緩和してほしい』『経費率を含めた積算根拠を公表していただきたい』『地元に配慮した指名競争入札を増やしてほしい』『建築、電気設備、機械設備それぞれの設計図上に食い違いがないようお願いしたい』などが出された。
今回のアンケートについて、阿久澤会長は「調査結果によって各社が抱えている課題が浮き彫りとなり、それが共通していたことも改めて認識させられた。今後の協会運営の参考にしていきたい。また、正会員全社がアンケートに協力してくれたことに感謝申し上げる」とコメントを寄せた。