日本工業経済新聞社(山梨)
2014/05/29
【山梨】早川芦安連絡道路、環境調査やトンネル設計へ
県の2014年度第1回公共事業評価委員会が28日に開かれ、事前評価事業として畑地帯総合整備事業菱山地区(甲州市)、早川芦安連絡道路(南アルプス市〜早川町、L4980m)の2件を「妥当」とした。早川芦安連絡道路では14年度、測量や地質調査、環境調査、トンネルや橋梁などの設計を進めて施工方法を検討。用地買収、工事用道路工事も予定する。順調にいけば15年度から工事を進め、19年度の事業完了を目指す。
2件の事業概要は次のとおり。
【早川芦安連絡道路】
早川町奈良田地区と南アルプス市芦安地区を結ぶ道路として計画。両地区は主要地方道南アルプス公園線と県営南アルプ宇林道で結ばれているが冬季は閉鎖されている。災害時の孤立集落発生を防ぎ、地域の活性や観光への貢献を考え、両地区を結ぶ連絡道路を緊急道路整備改築事業(国補)として計画した。
県によると、全体計画は延長4980m、幅員5・5(7・0)m。早川町奈良田地区の主要地方道南アルプス公園線を起点に、早川を橋梁で跨ぎ、その後は一部盛土とした後、東方面へトンネルを整備し、トンネルを通過後、南アルプス市芦安曽根沢地区で一部盛土を行い、県営林道南アルプス線に接続する。
全体延長のうち4分の3を占めるのがトンネルで、計画規模は延長3740m。全幅は5・5(6・5)mで、路線幅員の7mから縮小することでコスト縮減を図る。また、トンネルによる最短距離ルートとすることで地形への影響を最小限に抑え、最も経済的な計画とする。費用対効果(B/C)については、便益(B)が100億6000万円、費用(C)が76億2000万円(改築費65億6000万円、維持管理費4億6000万円)で、便益が費用を上回っている。
トンネル工事に伴う発生土は約20万立方mを見込んでおり、盛土の一部に利用する。また、JR東海によるリニア新幹線建設に伴う発生土が早川町新倉地区で約330万立方m見込まれており、そのうち約160万立方mを同連絡道路の盛土に活用する予定。
総事業費は約80億円。財源は、国費32億5000万円、県費17億5000万円のほか、リニア工事の発生土を盛土に活用する計画のため、その負担金30億円も見込んでいる。
年次計画によると、14年度は調査設計、用地買収、工事用道路工事を進める(事業費3億円)。調査設計では測量、地質調査、環境調査などの現況調査を進めるとともに、トンネルおよび橋梁の設計も行い、施工方法や最適ルートを検討する。15年度以降は、道路改良工事、橋梁工事、トンネル工事を進め19年度の完了を目指す。年度ごとの事業費は、15年度15億円、16年度20億円、17年度20億円、18年度12億円、19年度10億円。
【畑地帯総合整備事業菱山地区】
甲州市勝沼地区のぶどう畑地を対象に生産基盤の整備を計画。ニホンジカなどの鳥獣被害も発生しているため防止施設も整備する。
全体計画は、区画整理31・9h(7カ所)、用排水路1430m(8路線)、農道7930m(26路線)、鳥獣害防止施設9500m(H2・3m。電気柵1カ所)。受益面積は156hで、JR中央線を挟み、東西に広がる区域が対象。総事業費は28億円。
評価委員会で県は同事業について、B/Cは2・37と高く、既存施設の改修が中心で環境への影響を低減することや、区画整理の切盛量も少なくして現地の地形に応じた工事とすることを説明。住民を対象としたワークショップも開催し合意形成を図っていることも紹介した。
14年度は、鳥獣害防止施設の整備を行う(事業費5000万円)。15年度以降は区画整理や用排水路、農道、防止施設の整備を順次進め、22年度の事業完了を目指す。