日本工業経済新聞社(群馬)
2014/04/17
【群馬】古橋勉県土整備部長就任インタビュー
古橋勉県県土整備部長は17日、群馬建設新聞の就任インタビューに応じた。ことしは八ッ場ダムの着工や東毛広域幹線道路の全線開通など明るい話題が目立つ一方で、2月には歴史的な大雪被害に見舞われ、その対策の必要性も浮き彫りとなった。古橋部長は道路整備について「7軸整備はしっかり進める必要がある。徐々に効果も上がっている」と述べた。また、業界とのさらなる連携が重要であると強調し、県内各地で意見交換を進めていく姿勢も示した。
−年度当初からの生え抜き県土整備部長となった。就任の抱負は
古橋 ことしで県庁に入って38年目になる。何代もの土木部長、県土整備部長に仕えてきたが、生え抜きうんぬんではなく皆さま方が県土の社会資本整備、危機管理などに十分な成果を挙げてこられている。今まで先輩方が作り上げてきた成果をもっと積み上げていきたい。県土整備部は人も多く、予算も大きい。県民のために社会資本というインフラをどう整備していくか、危機管理にどう対処していくか、ということを考えると「重責だ」と感じた。
−今秋にも八ッ場ダム本体工事が着工となる。県としてどのように関わっていくのか
古橋 「やっとダム本体に着工できる」というのが第一の感想。何十年も地元はダム前提の生活再建に取り組んできた。早く仕上げてもらいたい。そうすることが地元の方々の生活再建の後押しとなる。県としては、地元の生活再建が一層進むように下流都県や国と協力して、しっかりと仕上げていきたい。生活再建が成ったという実感を得られるよう、引き続き頑張らなければならない。
−「7つの交通軸構想」が着実に進んでいる。道路整備全般の必要性をどう捉えているか
古橋 グローバル化して交通の重要性が極めて高くなっている。関越や上信越、東北、それを結ぶ北関東自動車道ができ、本県は全国各地の空港や港へのアクセス性が極めていいポジションになった。知事は発想がグローバルなので、高速道路を生かすためには、つなぐ道路整備が必要だろうと。東毛広幹道は群馬県の工業地帯である伊勢崎、太田、館林の南部を真っすぐつなぎ、主要な高速道路にもつながる。経済面や物流の効率化に相当効果が高く、県経済活性化に役に立つインフラになっている。北関東自動車道ができたことで、今まで来なかった客層が県内に来るようになったという話も聞く。また、椎坂トンネルが昨年開通したことで、前年比でスキー客が10〜20%増えた。2月の大雪の際にはトンネルがなければ孤立したのではないかという話も聞こえている。上信自動車道も吾妻東バイパス2期が認められ、八ッ場ダムから東側が全線事業化となった。これが完成すれば渋川から八ッ場ダムまで30分となる。四万や沢渡、草津も近くなり、観光面からも期待が高まっている。7軸整備はしっかりと進める必要があるし、徐々に効果があがってきており、産業界からも評価されている。
−先ほども話が出たが、本県は2月に大雪の被害に見舞われた。除雪体制の現状と課題をどのように認識しているか
古橋 まずは業界200社余りが不眠不休で対応していただいたことに感謝申し上げたい。初めての経験の中で反省点はいろいろある。気象情報を信じすぎて対応が遅れてしまった。これからは空振りしてもいいから最悪のケースを想定した体制をとっていきたい。初動体制の遅れによりオペレーターが除雪機までたどりつけなかったり、真夜中の雪だったため、なかなか交通規制体制がとれなかった。ただ、その後は北毛のロータリー車を西毛に持っていくなど最適な対応をしたと思う。
−県内の除雪車両555台という体制についてはどう捉えているか
古橋 積雪地域である北毛の除雪体制は整っているが、西毛地域は積雪地域でなく初めての経験だった。555台がベストかと言われると、今回を見るとベストではなかったのだと思う。最適な台数を経済面、配置箇所などを考慮して研究していく。国やネクスコとは連絡体制に関する勉強会をすぐに始める。市町村とも連携を深めていかなければならない。
−建設業界では人手不足ということが課題に挙がってきている
古橋 産官学で若手技術者を県内の建設業に従事してもらおうという取り組みを実施している。資格をとってもらうための勉強だとか。業界の方でも若手技術者を採用して、しっかりと育てようとしている。大学や工業系高校と連携して若手技術者を育てなければならない。業界は高齢化しており、40代から60代が中心となっている。20代にとって魅力ある職場にして、ものづくりの楽しさを実感してもらうとともに3Kからの脱却が大事だ。
−議会では県の技術職員も今後15年で半数が退職するという指摘があった
古橋 県では個人の資質アップのため、研修や講習を必須化している。組織力やチーム力を上げることも課題で、各所属長にもお願いしたいと思っている。国など、ほかの機関が実施しているいい点をどんどん取り込み、人員の減少をカバーしていきたい。
−業界との連携、業界に対するメッセージは
古橋 建設業界はインフラをつくり、管理する大切なパートナー。非常時には県民の安全安心を確保し、いざというときに実行力のある機関だと思っている。業界とはパートナーとしてお互いに意見交換をする中で、より品質の高いインフラをつくってもらい、一緒になって県民により良いものを提供したい。そのためにも意見交換が大事。適正な利潤が出るような積算もしなければならない。工期を短縮していいものをつくってもらいたい。若手技術者の育成など、業界が抱える課題を一緒になって解決しなけばならない。
−笹森秀樹元県土整備部長が群馬県建設業協会12支部と意見交換を行ってきた
古橋 継続したい。各地域ごとに課題も違う。できるだけ早く意見交換をしたい。