建通新聞社
2014/01/20
【大阪】 丹生ダム建設事業が中止へ―
丹生ダム建設事業が中止へ―。淀川水系丹生ダム建設事業の「関係地方公共団体からなる検討の場」が1月16日に大阪市内で開かれ、「ダム建設を含む案は有利ではない」と結論付けた。滋賀県長浜市の藤井勇治市長は「大変無念だ。国が強力に進めてきた事業を国によって中止するような事例は、最初で最後にしてほしい」と訴えた。国土交通本省で対応方針が正式に決まれば、滋賀県が姉川・高時川の河川整備計画を固め、治水対策を担うことになる。
検討の場には、国土交通省近畿地方整備局の池内幸司局長、水資源機構の甲村謙友理事長、嘉田由紀子滋賀県知事らが出席。淀川水系の下流域に当たる大阪府・京都府・兵庫県の知事は欠席し、代理が出席した。
藤井市長は「姉川と高時川はダム計画があったため、治水対策が大きく遅れている。ダムを中止にするのであれば、せめて制度や仕組みを見直し、国直轄で治水事業を進めるべきではないか」と詰め寄った。嘉田知事も「県では延長2200`、504河川を管理し、毎年度数十億円を投資している。特定の河川に集中投資することはできないため、直轄で事業を進めてほしい」と同意。
これに対し池内局長は「制度上、直轄で進めることは難しい」としながらも、「交付金の手続きなどの相談に乗り、可能な限り支援したい」との考えを示した。
丹生ダムは姉川・高時川の洪水調節などを目的に、長浜市余呉町小原に計画。渇水対策容量をダムに確保する案はロックフィルダムで、堤高118b(総貯水容量約8450万立方b)。一方、渇水対策容量を琵琶湖に確保する案はコンクリートダムで、堤高89b(同約3670万立方b)。
この2案を含む7案を総合的に評価した結果、渇水対策の緊急性が低いことから「ダム建設を含む案は有利ではない」と判断。洪水調節として有利な案として、姉川・高時川下流での河道掘削、高時川上流での堤防または輪中堤・宅地の嵩上げなどが有力となった。
丹生ダムは1968年に建設の可能性を検討するための調査を開始し、88年に事業着手。96年には全ての対象家屋の移転が完了した。その後、各利水者の水需要計画が見直され、新規利水は全量撤退の方向となった。
こういった経緯を踏まえ嘉田知事は「もともと下流側から求められた事業。その3知事が出席していないのは非常に残念。水源地、上流域の痛みを下流域の皆さんにも理解してもらい、対応を考えてほしい」と話した。