日刊建設工業新聞
2013/12/03
【鳥取】米子市長が実施打ち出す/米子駅南北一体化事業
米子駅南北一体化事業が動き出すことになった。2日から始まった米子市議会12月定例市議会初日の閉会のあと、直ちに開いた市議会全員協議会で野坂康夫市長が「JRと協議しながらこの事業を進めてまいりたいと考えております」と事業実施の方針を明確に示した。合わせて、事業期間はJRとの精緻な調整が必要としながらも5年程度を見込むとして、事業資金には合併特例債(2019年度まで適用期間が延長された)を活用する方法を視野に入れ、14年度にはJRと細微にわたっての協議を行った上で、国への予算要望の協議をする―考えも示した。これによって、具体的に動き出すのは「15年度ごろを想定」(角博明副市長)とした。
この米子駅南北一体化事業は米子市にとっての懸案事業の一つ。当初の概算事業費が約63億円とされ、それに伴う市の財政負担の大きさから「駅南側の開発計画が具体化してから」という野坂市長の姿勢の中で、事実上棚上げ状態になりつつあったが、JR側が駅ビルの耐震化との絡みから米子支社機能を他市へ移すのではといった憶測も飛び、今や喫緊の課題になりつつあった。駅のバリアフリー化が完成し、JRが概算事業費の再検証をした結果、約40億円に減額される見通しを示したものの、市長の慎重姿勢は変わらなかった。
結局、この問題に決着の道筋を付けたのは去る11月28日の県議会での「米子駅の規模の大きさから事業費が想定以上に膨らんで財政負担も大きいが、いずれはやらなければならない事業であり、県議会の賛同を得ながら米子市の事業に対し、応援する気持ちはある」とする平井伸治知事答弁だった。この日説明でも知事のこの言葉をうけての対応であることは明白だった。
この日、議会サイドからは事業の再構築の可能性、財政問題を中心に質問が相次いだ。事業費の詳細な検証はコンサルに委託して実施するほかないが、概算の事業費としては40〜41億円でJRと協議中とした。事業計画の再構築に関しては駅舎の設置構成や自由通路の幅員などJRと協議する中で変わってくる可能性を示した。また、資金手当てに関しては国の補助としては社会資本整備交付金で55%の補助を受け、残る部分を市費で賄うことになるが、この部分の95%を合併特例債で充当、県の支援については今後事務的に詰めていくことになるとした。
社会資本整備交付金の中には下水道事業など既存の事業も含まれることなどから、既存事業への影響を懸念する声も聞かれたが、公債費の負担への影響について「0・2程度で納まる」ため影響は微々たるものとの見方を示した。このほか、駅南側のターミナルの事業主体がどこになるのか、そこへのアクセス道路は誰がするのか―など個別の追及はあったが、現時点でそれらに答えられる状況にはなく、「駅南広場はバスヤード、タクシーヤードは想定しているが、JRの用地も入っており、双方の役割分担、国の補助など考えながら今後事業主体が定まっていく」と答えるにとどまった。