日本工業経済新聞社(群馬)
2013/10/08
【群馬】群建協が東京駅丸の内駅舎工事で講演会開く
群馬県建設業協会(青柳剛会長)は7日、前橋市内の群馬建設会館で講演会を開催した。『最先端技術で未来へ継承』をテーマに、東京駅丸の内駅舎保存・復原に共同企業体の元副所長として工事に携わった鹿島建設東京建築支店の上浪鉄郎氏が施工時における創意工夫や苦労した点などを披露した。
講演に先立ち、あいさつに立った青柳会長は「最近の建設業界を取り巻く話題といえば、何と言っても人材不足に尽きる。協会が昨年実施した『技術者アンケート』では10年後には技術者が半減してしまうという衝撃的なデータが示された。原因は、その時々の政策にわれわれ業界が翻弄してきた結果といっても過言ではないと考えている。われわれの業界も、いかに魅力ある産業に変わりつつあるかをタイムリーに発信していくこと、ものづくりの役割を発信していくことが大事であり、本日の講演では、改めてものづくりの素晴らしさをご理解いただきたい」と呼びかけた。
その後、上浪氏が登壇。東京駅の歴史や工事のポイントおよび施工条件、工事工程などを工事記録DVDを使用して紹介。続けて、保存・復原工事、駅舎を残したままでの地下構築による免震化を詳細に説明した。
保存・復原工事では室内装飾当時の高い技術を再現するため、試行錯誤の中で納得いく出来栄えを求め、時には職人同士のぶつかり合いもあったという。また、技術の継承を念頭に置き、20代から30代の若年技術者へ指導しながら施工を進める技能者の存在も披露。他方、現代へ技術が継承されなかった化粧れんがの覆輪目地施工について、上浪氏は「コテの製作から始まり、腕利きの目地職人が毎日毎日練習と試験を重ねた上で、本施工に臨んだ」と施工の難しさとともに、技術の継承の重要性を指摘した。
免震化は、駅舎の荷重を仮受けしている間に地下部で逆打工法による地下躯体の構築と免震装置を設置し、本設杭への荷重移行後に仮受け支柱を撤去するもの。工期に4年半もの歳月を要した、この免震化では狭隘箇所での杭工事、さらに既存の松杭との取り合いを考えながらの施工では人力で土砂を排出したのち、改めて杭工事を実施するなど大きく苦労した点を紹介。このほか、日本最大規模の免震レトロフィット工事の詳細が説明された。