建通新聞社(神奈川)
2013/09/30
【神奈川】神奈川県 「かながわ方式」見直し 最低制限価格を2〜4%引き上げ 11月公告から 上限90%は継続
神奈川県は、入札・契約における「かながわ方式」で、最低制限価格を見直す。一般管理費に退職金手当相当額などを新たに計上、現場管理費で現場作業員の法定福利費相当額を国に合わせて引き上げることなどで、全体として2〜4%の引き上げになる見込み。ただし、上限率は現行の90%を継続する。11月1日以降に入札公告する案件から適用する予定だ。県議会の委員会に示した。
国の基準価格見直しを踏まえ、県独自の「かながわ方式」の基本的考え方である、「工事の品質確保と県内中小建設業者の育成」の視点を継続した上で、地域経済の景気活性化にも資する見直しとする。
主な見直し内容は、「一般管理費等」で、@退職金手当相当分を新たに計上(国の引き上げ内容の本社・支店の給料手当相当分はすでに計上)A建設業者による重機保有に必要な減価償却費相当分を新たに計上。「現場管理費」では、@現場作業員の社会保険加入促進を図る観点から、現場作業員の法定福利費相当額を、国に合わせて引き上げA専門業者への外注経費相当分を新たに計上。
国の低入札調査基準価格見直しでは、「一般管理費等」に含まれる経費理うち、本社・支社の給料手当相当分と退職金相当分を新たに計上することとし、基準価格の算定式における「一般管理費等」の算入率を0・3から0・55に引き上げた。この結果、基準価格はおおむね2%上昇。県の見直しは国と同等以上の引き上げとなる。
県は2006年度から、原則として250万円を超える案件について、条件付き一般競争入札で業者を決定する入札制度「かながわ方式」を運用している。
09年6月から実施してきた最低制限価格率の上限を予定価格の90%に引き上げている措置については、現在の厳しい経済状況や中小建設業者の経営状況などを考慮し、適用期限を13年度末まで延長するとしていたが、今回の見直しにより、14年度以降もこれを継続することになる。
県内の建設業者が指摘するのは、「上限率90%だが、実際には工事の落札率は86〜87%程度で推移している」こと。つまり、最低制限価格率が上限の90%に設定されている案件ばかりではないのが現状。
こうした中、国では低入札調査基準価格の一般管理費の算入率を引き上げた。かながわ方式の最低制限価格率の算定は、直接工事費などに一定の算入率を乗じることで80〜90%に設定。国の低入札調査基準価格率とは異なる神奈川県独自の参入率となっており、他の自治体が国に準じた引き上げを行う中で、神奈川県の対応が遅れた面がある。
このため、「最低制限価格率の引き上げ」を求める陳情が、建設業3団体から県議会議長あてに提出(対応は継続審査)されるなど、早期の対応が求められていた。
今回の見直しは、一定の評価が得られるものの、不満要素も含みそうだ。建設業界は最低制限価格率の上限率90%についても算定の実態に合わせて引き上げるよう求めていたが、今回の見直しでは引き続き90%の上限が設定される。計算上で、90%以上の最低制限価格が設定されるケースでも90%に抑えられることに、まだ、改善の余地があると見る向きもありそうだ。