日本工業経済新聞社(群馬)
2013/07/03
【群馬】改訂単価の維持必要
群馬県建設業協会(青柳剛会長)は、2013年度の公共工事設計労務単価が約15%引き上げられたことを踏まえて会員企業に実施したアンケート調査結果をまとめ、公表した。引き上げを評価するとした企業が全体の96%を占めた一方で、公共事業労務費調査については74%が「実態が反映されていない」と回答。3日に県庁で記者会見した青柳会長は「先を見通せる制度でなければ安定的なものづくり産業が構築されず、若い人が入ってこない」と警鐘を鳴らした。
アンケートは、国土交通大臣が建設業界に対して技能労働者の賃金引き上げや社会保険への加入徹底を要請していることに対して応えるべく、設計労務単価引き上げの波及や若者の入職促進の課題を整理するため、同協会会員および地区会員342社に対して5月に実施。307社から回答を得た。公共工事設計労務単価の引き上げについては「非常に評価する」が34%、「評価する」が49%、「やや評価する」が13%となり、計96%が評価。「人手不足の職種の実勢単価に近づくので経営にプラスになる」「若者の建設業への入職が期待できる」など歓迎する声が挙がっている。「設計労務単価の引き上げに伴い下請け代金や職人賃金を引き上げるか」との問いには22%が「労務単価の引き上げに準じて引き上げる」、45%が「労務単価の引き上げを受けて考証する結果による」と回答し、約7割の企業が引き上げる余地を有していることが明らかになった。
一方で、毎年10月に実施されている「公共事業労務費調査が実態に反映されているか」との問いには、調査協力経験がある244社のうち179社が「反映されていない」と回答。「現場作業がない日も常時雇用者に給与を支払っている事態を加味すべき」「年齢、経験、能力を考慮すべき」など、実態に即していないとする声が多勢を占めた。
若年者(24歳以下)の採用状況については、「毎年採用」が6%、「定期的に採用」が26%にとどまっている。受注量の将来見通しが立たないことから「直近5年間採用していない」は26%、「直近10年間採用していない」に至っては31%にものぼり、若者の採用に踏み切れない状況が浮き彫りになった。採用したとしても47%が「一人前になる前に退社する」と回答しており、建設従事者の高齢化が深刻な課題となっている。
10年の国勢調査によると建設従事者の18%が60歳以上。こうした人たちが70歳で退職すると仮定すると、今後10年間で52万人がリタイアする状況に陥ることとなる。こうした状況を踏まえ、同協会は若者の入職を増やし、技術の伝承を図るため@改訂単価が完全波及するまで改訂単価の維持A公共工事設計労務単価のさらなる引き上げB若年者の採用・育成のため建設企業の経営安定と建設需要の確かな見通しC公共事業労務費調査のより一層の改善D人材不足の時代を見越した諸制度の構築−の5点が必要と訴えている。
@に関しては、改訂単価が本格的に適用されるのは、本年度予算による公共工事が全面施工され、改訂単価による工事費の支払いが完了後と見込まれるため、ことし10月の公共事業労務費調査には引き上げ分が完全には反映されないと考えられるとして、改定単価が完全普及するには時間が必要であることを14年度の設計労務単価で勘案してほしいとしている。
Aについては、1998年度から下がり続けている労務単価が2002年度と同水準に戻っただけで、ピーク時の約8割の水準に過ぎず、若者の入職を促すには魅力がないと指摘し、さらなる引き上げが必要だと要望。
Bでは、若年者の採用を拡大するには育成経費の捻出や雇用条件の改善が重要で、そのためには建設需要の確かな見通しが必要としている。
Cでは、設計労務単価は予定価格積算のために不可欠だが、現在の制度下では予定価格以下でないと落札できないため、落札するために経費を削減せざるを得ず、削減された結果が実勢価格となり、翌年度の設計労務単価に反映されることから、設計労務単価が毎年下がる負のスパイラルに陥っていると指摘し、実態に即した調査改善を要望している。
Dについては、設計労務単価の引き上げとともに建設業に関係する教育制度や資格取得制度、雇用条件、入札契約制度など人が余っている時代に合わせられた諸制度を、人材不足時代に合わせて構築し直す必要があると訴えている。