日本工業経済新聞社(茨城)
2013/04/27
【茨城】県土木部インタビュー 早期円滑執行で発展軌道へ
あの大震災から2年が経過し、県内でも港湾や漁港、一部の橋梁を除いてほぼ復旧が完了した。県では引き続き完全復旧に取り組むとともに、さらなる発展軌道に乗せていく方針だ。その舵取り役を担う新土木部長、立藏義明氏に話を聞いた。立藏氏は、15カ月予算の執行を第1四半期から早急かつ円滑に進めるほか、2015年度までに成果が発現できるよう重点的に事業を推進する。通学路の安全対策では警察本部などと連携して対応。また懸念される労務単価や資材の高騰へ柔軟に対応する方針だ。
―就任しての抱負
大震災や笹子トンネル事故などにより、防災対策やインフラの老朽化対策の重要性が広く再認識され、迅速な対応が求められている。そんな中、公共事業に対する見方が変わり、期待も高まっている。
ことしは震災からの復興を着実に成し遂げ、さらなる発展の軌道に乗せていくための重要な年。土木部職員が一丸となって使命を果たしていきたい。また毎年予算が削減されてきたため、建設業界もわれわれも組織力が低下しつつある。予算の適切かつ効果的な執行を指導し、期待に応えたい。
―復旧事業へのスタンス
公共土木施設の復旧は、被害の大きかった港湾の一部や架け換えの必要な橋梁を除き、ほぼ完了した。残る箇所も早期に完全復旧できるよう、引き続き復旧に取り組む。また復興予算を活用した事業については集中復興期間の2015年度までに成果が現れるよう重点的に推進していく。
―15カ月予算の執行方針
前年度の大型補正では、直轄負担金も含め約320億円もの予算を確保した。本年度当初予算と合わせると、前年度当初比で1・46倍。この予算を円滑に執行するためには、建設業者が技術者や資機材などを計画的に確保しやすくなるよう、工事の計画的な発注、平準化が必要。特に大型補正予算は緊急経済対策の観点に立って、例年、工事発注が少ないとされる第1四半期から、早期発注に努めていく。
―復興へのプランは
大震災の経験を踏まえ、災害に強い県土づくりを推進する。昨年とりまとめた「復興みちづくりアクションプラン」などに基づき、橋梁の耐震化や法面対策、代替路の整備など、緊急輸送道路ネットワークの機能強化や、海岸、河川の堤防嵩上げなどの津波対策、圏央道、東関道の高速道路や港湾の耐震強化岸壁の整備促進、インフラの老朽化対策を進めていく。
特に高速道路や港湾は、災害時のみならず本県の発展のために重要なインフラ。関係機関に働きかけ一層の整備促進に努めていく。
―通常事業への取り組み
本県が目指す「生活大県づくり」に向け、日常生活を支えるインフラ整備など、通常事業もしっかり進めていく。特に生徒・児童の通学路の安全対策については、重要な課題として認識しており、生活環境部や教育庁、警察本部と連携し対応する。また、これらの事業は用地取得の難航などにより進捗が停滞するケースがある。市町村との協力体制も強化してまいりたい。
―事業を進める上で懸念されること
東北の復旧の本格化や、国の大型補正に伴う公共事業の大幅な増加、円安などで、労務単価や建設資材の価格高騰が心配。実勢価格との乖離など、状況の変化に注視しながら、業界へ過度な負担が発生しないよう、また事業執行に遅れが生じないよう、積算単価の随時改定やスライド条項の運用といった対策を迅速に行いたい。
また、大幅な労務単価の上昇に対して特例措置をとった国の対応に呼応。3月までに入札した案件で4月以降に契約となる工事について、2013年度の労務単価で変更できる特例措置を、県でも適用するよう部内の関係各課長と出先事務所へ通知した。業界へも周知し、適切に対応してまいりたい。
―入札制度への対応は
限られた数の技術者を建設業者が有効に活用できるよう、工事現場への配置技術者の専任義務期間を緩和するなどの対策をとった。また建設業者の施工実績要件や配置予定技術者の資格要件といった入札条件の見直しなど、より多くの建設業者が入札に参加できるような対策も進めていく。
―地元建設業者への対応
県は引き続き県内建設業者の受注機会の確保に務めるとともに、建設業界のイメージアップ、技術者や技能労働者の人材育成を建設業協会などと連携して進めていく。
また今後、老朽化していく橋など、施設の長寿命化対策を積極的に推進することになるが、地元に精通した地元建設業者は、その担い手として重要な役割を担っていると考えられる。県内業者を対象とした点検・修繕技術の研修を行うなど、技術力の向上にも努めていく。
今回の国の対応は予算が急激に増えたが、将来的な展望が不透明。5年先の公共事業の見通しがつけば、企業も技術者の増員や機材の入れ替えなどを行うと思う。国土強靭化は明るい兆しだが、これから国に求められるのは財政的な政策。今回の大型補正では地方負担の軽減も行われた。だが来年はどうなるかわからない。見通しがつけば建設業も良い方向に行くはず。
プロフィール
1954年(昭和29年)3月25日生まれの59歳。京都大学工学部交通土木工学科卒。生まれも育ちも茨城県。日立市在住。妻と2人暮らし。
昨年3月に愛犬を亡くし、以来、散歩の習慣を失う。趣味は囲碁とゴルフをそれぞれ忘れたころにやる程度。読書は東野圭吾などの推理小説を好む。現在は横山秀夫の『64』を読書中。
モットーは「常にベストを尽くす」