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日本工業経済新聞社(群馬)
2013/04/10

【群馬】県建設企画課が労務単価上昇でシミュレーション

 先ごろ発表された公共工事設計労務単価の上昇を踏まえ、県建設企画課が昨年度に発注した道路改良工事や河川工事などへ4月からの設計労務単価と入れ替えてシミュレートしたところ、工事費が平均して4・3%上昇したことが分かった。受注者側の収益向上とともに、技能労働者への適正な賃金の支払いが個人消費を後押しし、地域経済への波及効果が期待される。設計労務単価が大幅に上昇したことで、12年度大型補正予算と当初予算との一体で確保した前年度当初比1・5倍もの公共事業量に影響を及ぼすことが懸念されたが、シミュレーションの結果、多くの工種で3〜6%の上昇にとどまり、それを差し引いたとしても1・4倍以上の工事量を発注できることを証明した格好だ。また、労務単価の上昇による全体スライドの適用対象工事だが、八ッ場ダムの生活再建事業である(仮称)湖面1号橋上部工など数えるほどしかないのが現状。また、インフレスライドの適用についても条項の趣旨にそぐわないため、現時点では3月末までに契約した工事については適用されない基準となっている。

 13年度の公共工事設計労務単価だが、本県については平均して17・7%上昇している。
 同課が実施したシミュレーションは、県土整備部が昨年度に発注した工事をそれぞれの工種ごとに1件ずつ抽出し、新たな設計労務単価で工事費を算出したところ平均して4・3%上昇したという。
 工種別にみると、河川は◇ブロック積工が6・1%◇ボックスカルバート(800万円〜1000万円)が2・7%◇掘削・盛土が6・3%◇自然石張工が7・8%◇ボックスカルバート(5000万円〜1億円)が3・4%−と上昇し、平均して5・4%の上昇が見られた。
 道路改良では◇工事用道路が3・3%◇L型擁壁が3・4%◇排水管敷設が4・3%◇大型ブロック積が5・0%◇補強土壁が3・3%◇融雪設備が3・3%−となり、平均では3・5%の上昇となった。
 舗装は◇800万円〜1000万円の路面切削オーバーレイが2・8%◇1000万円〜2000万円の路面切削オーバーレイが2・5%◇2000万円〜5000万円の路面切削オーバーレイが1・7%◇5000万円〜1億円のコンクリート舗装が3・5%−とそれぞれ上がり、平均して3・0%上昇した。
 砂防・地すべりでは◇護床工が6・5%◇擁壁工が6・4%◇砂防ダムが5・4%◇排水トンネル補修が6・8%−で、平均上昇率は6・5%ともっとも高い割合だった。
 全体の傾向としては、2次製品を採用している工種は増加率が低く、土工事やコンクリート打設は工事費への影響が大きい。とりわけ、砂防工事はコンクリート打設が大部分を占めるため、多くの工種の中でも影響が大きくなるようだ。
 一方、繰り越し工事やゼロ県債工事、補正予算で3月末までの契約分については旧単価を適用しており、設計労務単価の上昇によるスライド条項の適用が気になるところ。設計労務単価の上昇には、工期が12カ月を超える工事を対象とした全体スライド、急激な価格水準の変動に対応するインフレスライドといった2種類の適用が考えられるが、同課によると、全体スライドについては八ッ場ダム生活再建事業である(仮称)湖面1号橋上部工など、ごく限られた大型工事のみといった現状だという。他方、インフレスライドの適用には『急激な価格水準の変動に対応する措置』といった趣旨があり、今回の設計労務単価の上昇は算定基準が改訂されたことによるものであるため、3月末までに契約された工事には現段階のところ適用されない基準となっている。国へ情報提供を求めたところ、被災3県を除き全国的にもインフレスライドの適用はないという。
 本紙の取材に対し、同課の倉嶋敬明課長は「3月末までに契約した工事に対するスライド条項の扱い、予定されている1・5倍もの公共工事費への影響など、業界では設計労務単価が上昇したことへの期待、それに対する県の対応に疑問などがあるだろうと思い、こういった確認・整理を行った。今回のシミュレーションを参考にし、今後の業務に役立ててほしい」と話している。